合歓の花(ねむのはな) 晩夏
【子季語】
ねぶの花、ねむり木、花合歓、合昏、絨花樹
【関連季語】
合歓の実
【解説】
合歓は淡紅の刷毛のような美しい花を開く。夜になると葉を閉じて眠ったようになるので、この名がある。
【来歴】
『枝葉集』(正徳元年、1711年)に所出。
【文学での言及】
昼は咲き夜は恋ひ寝る合歓木の花君のみ見めや戯奴(わけ)さへに見よ 紀女郎『万葉集』
【科学的見解】
合歓の木(ネムノキ)は、マメ科の落葉高木で、高さ六~十メートル前後になる。日本在来の植物で、本州から沖縄にかけて分布する。葉は多数の小葉からなる二回偶数羽状複葉で羽片は七から十二対、小葉は十八から二十九対になる。夜になると小葉は閉じて垂れ下がり、他のマメ科の植物同様、就眠運動を行う。六月から七月にかけて、枝先に十数個の頭状花序を総状につけ、夕方、紅色の長い雄蕊が多数ある花が傘状に開花する。(藤吉正明記)
【例句】
象潟や雨に西施がねぶの花
芭蕉「奥の細道」
舟引の妻の唱歌や合歓の花
千那「猿蓑」
雨の日やまだきにくれてねむの花
蕪村「新吾子稿」
合歓咲くや河水を汲む桔槹(はねつるべ)
河東碧梧桐「三千里」
合歓咲くや此処より飛騨の馬糞道
前田普羅「普羅句集」
合歓今はねむり合すや熱の中
石田波郷「病鴈」