リレーエッセイ004 小正月 中野津久夫
私の住んでいる集落は、いまも小正月に五穀豊穣と安寧を求めて、「塞の神」を 作り続けている。
塞の神づくりは、子供たちの各戸への藁集めからはじまる。男衆は寺山から孟宗竹を伐り出し、女衆は作る場所の雪ふみをする。その年に子供を持つ大人たちは、高さ三間余の円錐形の塞の神を半日かけて作り上げる。出来上がった「塞の神」は、雪原に青々とした竹の葉がそよいで立つ大きな藁の塔となる。夕星のひとつふたつも輝けば、その塔の美しさはたとえようもない。火入れは夕方である。
正月行事は、大正月・小正月に分けられる。大正月は日の神、産土神に奉仕する心構えの禊が主であり、小正月は豊作祈願や女正月ともいうように、農耕生活に招福を祈るという気構えがあったのだと思われる。
戦後、新暦の1月15日は、成人の日として国民の祝日であった。その祝日と小正月が相俟って、「塞の神」や、「繭玉」などの農耕文化の伝統行事は、各地で曲がりなりに継承されていた。しかし、決定的に衰退に拍車をかけたのは、2000年1月から導入されたハッピーマンデー制度によると言えるだろう。
農業を守ると言いながら、我が国の農耕文化さえ、蔑ろにした為政者と、その導入を阻止できなかった文化人たちの責任は重いと言わざるを得ない。(季語歳理事、写真=どんど焼)
