季語と歳時記の会(きごさい)の仕事の一つに「山桜100万本植樹計画」があります。
第1回目は2008年5月、新潟県加茂市の雙璧寺に120本を植樹しました。二回目は翌年2009年10月、韓国仁川市にある仁荷(インハ)大学校キャンパスに3本を植樹しました。
仁荷大学の王淑英先生からその山桜の写真が送られてきましたので掲載いたします。今日(4/14)の朝撮った写真です。クリックすると大きくなります。
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「動物季語の科学的見解(鳥類)」を追加しました
東海大学教養学部の藤吉正明先生による「動物季語の科学的見解」の追加です。二回目は鳥類の73季語、
赤鬚(あかひげ) 鷽(うそ) 鵲の巣(かささぎのす) 河烏(かわがらす) 河原鶸(かわらひわ) 小綬鶏(こじゅけい) 鷺の巣(さぎのす) 雀の巣(すずめのす) 巣箱(すばこ) 燕の巣(つばめのす) 鴉の巣(からすのす) 鳩の巣(はとのす) 松毟(まつむしり) 山鳥(やまどり) 白鳥帰る(はくちょうかえる) 引鶴(ひきづる) 岩燕(いわつばめ) 山椒喰(さんしょうくい) 仙台虫喰(せんだいむしくい) 頬白(ほおじろ) 藪雨(やぶさめ) 青鷺(あおさぎ) 蒿雀(あおじ) 青葉木菟(あおばずく) 青鳩(あおばと) 赤翡翠(あかしょうびん) 赤腹(あかはら) 鯵刺(あじさし) 雨燕(あまつばめ) 桑扈(いかる) 磯鵯(いそひよどり) 岩雲雀(いわひばり) 海猫(うみねこ) 蝦夷虫喰(えぞむしくい) 柄長(えなが) 大瑠璃(おおるり) 郭公(かっこう) 雷鴫(かみなりしぎ) 河鵜(かわう) 黄鶲(きびたき) 黒鶫(くろつぐみ) 鳧(けり) 小雀(こがら) 五十雀(ごじゅうから) 駒鳥(こまどり) 小瑠璃(こるり) 笹五位(ささごい) 鮫鶲(さめびたき) 三光鳥(さんこうちょう) 四十雀(しじゅうから) 雪加(せつか) 玉鴫(たましぎ) 筒鳥(つつどり) 虎鶫(とらつぐみ) 野鶲(のびたき) 鷭(ばん) 日雀(ひがら) 便追(びんずい) 仏法僧(ぶっぽうそう) 頬赤(ほおあか) 星鴉(ほしがらす) 眉白(まみじろ) 水薙鳥(みずなぎどり) 溝五位(みぞごい) 眼白(めじろ) 眼細(めぼそ) 山雀(やまがら) 山翡翠(やませみ) 葭五位(よしごい) 夜鷹(よたか) 雷鳥(らいちょう) 瑠璃鶲(るりびたき) 巣立鳥(すだちどり)
以上季語の解説が新しくなりました。ぜひ、お読みください。今後は、鳥類の追加や魚類、爬虫類、昆虫などについての改訂も予定しております。
なお、今回の改訂にあたって引用及び参考にした文献は以下の通りです。
引用及び参考文献
・叶内拓哉・浜口哲一(二〇〇八)新装版山渓フィールドブックス十五 野鳥、山と渓谷社
・小林桂助(一九九六)エコロン自然シリーズ 鳥、保育社
・小宮輝之(二〇一〇)増補改訂フィールドベスト図鑑 日本の野鳥、学研教育出版
・高野伸二(二〇一五)増補改訂新版 フィールドガイド 日本の野鳥、日本野鳥の会
・高野伸二(一九九六)山渓カラー名鑑 日本の野鳥、山と渓谷社
・戸塚学・箕輪義隆(二〇一二)身近な野鳥観察図鑑、文一総合出版
・中村登流・中村雅彦(一九九五)原色日本野鳥成体図鑑(水鳥編)、保育社
・中村登流・中村雅彦(一九九五)原色日本野鳥成体図鑑(陸鳥編)、保育社
・松田道生(二〇〇八)日本の野鳥図鑑、ナツメ社
・本山賢司・上田恵介(二〇〇六)鳥類図鑑、東京書籍
きごさい 第十六号が出ました
特集 AI俳句の現在
AI&人間 合同誌上句会 きごさい編集部編
誌上座談会AI句作を語る きごさい編集部編
AI一茶くんの仕組み 山下倫央
考察人間はなぜ俳句を詠むのか 藤英樹
明治以降に生まれた季語 橋本直
牧野富太郎が名付けた身近な植物 藤吉正明
『新版角川俳句大歳時記』ここが変わった 高橋真樹子
連載 加藤楸邨×大岡信 対談④
検証 草田男の「楸邨氏への手紙」 構成・解説 西川遊歩
連載 末期的大衆社会をどう乗り越えるか⑤
俳句はネット社会を生き抜けるか 関根千方
HAIKU+(今何が問題か)
季語と暮らし 谷口智行
きごさい+(講座+句会)
小倉百人一首 競技かるたの世界 ストーン睦美
台湾映画の世界「悲情城市」から多様性の台湾へ 林ひふみ
異国への憧れ、南蛮菓子あれこれ 中山圭子
季節をめぐる鳥の世界 樋口広芳
動物季語の科学的見解 鳥類(春・夏) 藤吉正明
「一月の川一月の谷の中」はなぜすばらしいのか 長谷川擢
第十二回きごさい全国小中学生俳句大会報告
第十三回 きごさい全国小中学生俳句大会 表彰式
3月9日(土)都立清澄庭園内、大正記念館におきまして「第十三回きごさい全国小中学生俳句大会 表彰式」が行われました。
授賞式参加のために来場した皆さまが、清澄庭園の池を巡り、ご家族そろって笑顔で大正記念館に入ってこられ受付をなさる姿が印象的でした。保護者の方から「三月の青空と優しいひかりそして澄み切った空気、開放的なガラス張りの記念館とお庭、鮮やかな花と鳥たち」と表現された庭園はいつまでも見飽きない景色でした。
今回の「きごさい全国小中学生俳句大会」には、大賞、特選、入選、佳作、研究会賞、学校賞の表彰者約30名と、保護者約50名、合わせて80名を超える皆さまが、東京都内はもちろんのこと、大分県や山口県、また高知県や京都府など遠方からもお越しになりました。本俳句大会では、外国の日本人学校を含め、29都道府県132校から17,000名の応募があり、過去最高の応募数となりました。
表彰式では、壇上の受賞者が緊張しながらも、賞状を客席にご披露くださる場面も見られ、会場から盛んな拍手が送られておりました。
【大賞】
あせいっぱいぼくのからだであそんでる
土佐市立高岡第一小学校
五年 関 隆佑さん
髙田正子氏
【特選】
いますぐにはしりだしたいとかげかな
世田谷市立桜丘小学校
三年 濱﨑 葵さん
ドッカーンほえているんだ大花火
土佐市立高岡第一小学校
四年 中平琉輝矢さん
満月へ道がつながるはしの上
江東区立川南小学校
六年 伊藤 翔さん
長谷川櫂氏
【特選】
父がつくる雑煮の味は母の味
山口大学教育学部附属光中学校
三年 久保めぐみさん
終戦日影も子どももみな消えた
大分市立大在小学校
五年 松尾彩希さん
あせいっぱいぼくのからだであそんでる
土佐市立高岡第一小学校
五年 関 隆佑さん
小山正見氏
【特選】
夏祭りみこし空まで持ち上げる
静岡学園中学校
三年 宮村 圭さん
マイルール白線たどる春の道
足立区立島根小学校
五年 杉瀬 葵さん
青空を貸し切りにして運動会
江東区立明野小学校
六年 安井彬人さん
その後行われた講評会では、長谷川櫂氏、髙田正子氏、小山正見氏、飛岡光枝氏、上澤篤志氏による鑑賞講評とともに、受賞者自身の飾らない生の思いも語られ、受賞作品をより深く多面的に味わう機会になりました。
表彰式では、副賞として、書道家であり、日本学校俳句研究会理事の白川鼎心氏が受賞句を揮毫くださった色紙(大賞)、きごさい代表の俳人、長谷川櫂氏著の『四季のうた』(中公文庫)、『こども歳時記』(小学館)、開明の墨汁が贈られました。
昨年にひき続き、オンライン(リアルタイム)での表彰式参加者も募ったところ、7名の児童生徒とそのご家族さまからご希望があり、美しい画面のモニターをとおして、賞状を受け取ったり、コメントを返したりする場面も見られ、モニター越しに全体写真に参加するなど、工夫の活かされた式となりました。
今回から、読売新聞社東京本社のご後援をいただけるようになりました。「きごさい全国小中学生俳句大会」の重要性が理解され、子どもたちの感性を磨く場がますます広がっていきますこと、大変有り難く存じます。ご協賛くださっている(株)小学館、開明(株)をはじめ、ご協力くださった清澄庭園、江東区芭蕉記念館等、関係するすべての皆さまが全面的にご支援くださり、おかげさまで会場に集ったすべての方々が潤いのある、豊かな時間をともに味わう表彰式となりました。この場をお借りし深く感謝申し上げます。
5/12(日) ズームできごさい+ 「韓国の四季と生活」
さまざまなジャンルから講師をお迎えして季節や文化に関わるお話をお聞きする「きごさい+」
今回の講師は、俳人で長きにわたってソウル俳句会を牽引されてきた山口禮子さんです。
どうぞぜひご参加ください。
講演の後、句会もあります。(選者:山口禮子、趙栄順、長谷川櫂)
日 時 : 2024年5月12日(日) 13:30~16:00
演 題 : 韓国の四季と生活 ―ソウル俳句会の俳句から―
講 師 : 山口 禮子 (やまぐち・れいこ)
プロフィール:
1950年、東京都葛飾区生まれ。慶應義塾大学 文学部卒。史学科民族学考古学専。
1991年渡韓、延世大学、梨花大学語学堂にて韓国語、成均館大学大学院にて考古学を習得。1995年4月、ソウル俳句会入会。1996年よりソウルガーデンホテルに勤務。
2006年より2023年までソウル俳句会主宰。現在、同句会顧問。
『歳時記学 第3号』、『半島 山口禮子句集』に収録した「覚書 韓国歳時記」では50余の韓国季語を紹介している。
講師からのひと言
ソウル俳句会は1993年3月、旭化成のソウル駐在員だった故戸津真乎人氏の声掛けで日韓の会員10名ほどの日韓友好の草の根交流をめざす同好会として発足した。師もなく派もなく、ただ地縁だけで結ばれた俳句会ではあるが、31年間の時と5代の主宰を経て、現在はソウルの本部、および帰国者によるなにわ支部、東京支部と合わせて81名を擁し、本部では月2回の定例句会、各支部では不定期に句会を行っている。
臨場感を定法の一つとする俳句。これまでに詠まれた数千、いや数万になろうかという莫大な句に、韓国ならではの風景、生活、季節感の描かれたものを拾ってみることは可能だろう。それらの句を通して、韓国への理解が深められたらと思う。
2024年5月12日(日) 13:30~16:00 (13:15~ Zoom入室開始)
13:30~14:45 講演
14:50~15:20 句会(選句発表)
15:20~16:00 趙栄順(きごさい編集委員)との対談、質疑応答
<申込み案内>
1. 参加申し込み 5/3(金)まで: ここをクリックして申込みフォームからお申込みください。
2. 参加費:きごさい会員:1,000円 会員外:2,000円 会費の振込先は自動確認メールでお知らせします。
3. ズームのURL、句会の入力フォームのURLは、申込みをされた方に5/7頃までにメールで配信致します。かならずご確認ください。
4. 句会:当期雑詠5句 前日投句です。 選者:山口禮子、趙栄順、長谷川櫂
前日5/11(土) 17時までに所定のフォームから投句。ただし句会の参加は自由です。
ズームを使ったオンライン講演会です。5/3(金)までに参加申し込みをして、5/7頃メールで配信するズーム入室URLなどの案内をご確認いただかないと、当日視聴できません。よろしくお願いいたします。
第13回きごさい全国小中学生俳句大会
【大賞】
あせいっぱいぼくのからだであそんでる
土佐市立高岡第一小学校 五年 関 隆佑
【学校賞】
土佐市立高岡第一小学校
山口大学教育学部附属光中学校
【奨励賞】
江東区立第二亀戸小学校
大分市立大在小学校
小山正見 選
【特 選】
夏祭りみこし空まで持ち上げる
静岡学園中学校 三年 宮村 圭
コロナ感染が下火になり、三年ぶりのお祭りが弾けるように各地で行われた。神輿が町をうねり、威勢のよいかけ声が響いた。そこには日常が戻って来た喜びが込められている。
マイルール白線たどる春の道 足立区立島根小学校 五年 杉瀬 葵
学校の登下校、石を蹴り続けて歩いたり、線の上から外れないように歩いたり・・・一人でそんな遊びをしたことがある。自分だけの「マイルール」を決めた遊びなのだ。こどもはすべてを遊びにしてしまう天才だ。
青空を貸し切りにして運動会 江東区立有明小学校 六年 安井彬人
運動会の天候だけは、先生方や保護者の力ではどうにもならない。ところが、当日は素晴らしい秋晴れ。「やった!」と叫びたくなるほどだ。地上では素敵な演技が繰り広げられたに違いない。
【入 選】
花束のようにかかえる稲の束 大分市立大在小学校 五年 白井海翔
咲きたての桜のような十二歳 豊島区立西池袋中学校 三年 石山結華
風船が空に吸われて終戦日 大分市立大在小学校 五年 秦野琥羽
しんしんと雪の音色がふりつもる 京都女子大学附属小学校 三年 下園紗代
あせいっぱいぼくのからだであそんでる 土佐市立高岡第一小学校 五年 関 隆佑
点Pに点Q追加小鳥来る 仙台市立郡山中学校 三年 石川寿々
終戦日影も子どももみな消えた 大分市立大在小学校 五年 松尾彩希
うらがえるセミのちかくをおそるおそる 千代田区立九段中等教育学校 二年 久木元秀至
新米の一つ一つの物語 江東区立扇橋小学校 六年 越島優奈
ぱくぱくときんぎょものいうことがある 土佐市立高岡第一小学校 二年 田中詩乃梨
【佳 作】
あきのはれジャングルジムにぶらさがる 江東区立数矢小学校 一年 横澤吾郎
夕立といっしょに帰る午後三時 江東区立第一亀戸小学校 五年 瀧澤彩妃
まく種は亀戸大根秋日和 江東区立第二亀戸小学校 四年 川﨑佑馬
青森で最初は雪をかく仕事 江東区立浅間竪川小学校 四年 清野太翔
せみとったぼくよりよろこぶおじいちゃん 京都女子大学附属小学校 二年 浮村聡一
夜食とる母の愛情重すぎる 仙台市立郡山中学校 三年 黒田春美
髪洗ふ今日の失敗流れゆく 鹿児島市立坂元中学校 二年 住本愛恵
秋驟雨ノイズ混じりのレスポール 大阪市立都島中学校 三年 甲田莉久
耕せば土を跳び越す雨蛙 お茶の水女子大学附属中学校 三年 由宇弘賢
東照宮博識になる秋うらら 江戸川区立北小岩小学校 六年 吉羽悠人
どんぐりのサイズのちがうぼうしかな 江東区立第二亀戸小学校 四年 戸倉煌希
アンカーは君に任せた赤とんぼ 江東区立数矢小学校 五年 藤本亮馬
るすばんの庭にゆれてる秋ざくら 足立区立西新井小学校 三年 加藤 絢
秋の空まがってにげるおにごっこ 葛飾区立新宿小学校 四年 手嶋琉斗
秋の空十秒まったらかげおくり 葛飾区立新宿小学校 四年 長野璃々
髙田正子 選
【特 選】
いますぐにはしりだしたいとかげかな 世田谷区立桜丘小学校 三年 濱﨑 葵
このとかげは、作者が自分を見ていることを知っているのでしょう。のどのあたりがドキドキと大きく動いています。つかまえようと手を伸ばしてきたら、さっと逃げるからな、と言わんばかりに小さな眼が動きます。とかげの身になって詠み切ったところが楽しい句です。
ドッカーンほえているんだ大花火 土佐市立高岡第一小学校 四年 中平琉輝矢
中止が続いていた花火大会が次々に再開された二〇二三年でした。河原や海辺へ出かけて、本物の打ち上げ花火を見上げた作者でしょう。テレビで観るのとは違ってすごい迫力です。全身でとらえた花火は猛獣のようにほえていました。「ほえる」が光る句です。
満月へ道がつながるはしの上 江東区立川南小学校 六年 伊藤 翔
作者は今どこかの橋を渡ろうとしています。真正面には大きな満月。月の光を受けて橋は白い道のようです。このまままっすぐ渡っていくと月まで行けるかもしれない。そんな気分になったのでしょう。「道がつながる」と言い切ったところがすばらしいです。
【入 選】
キューピーのあたまみたいなミニトマト江東区立豊洲北小学校 二年 村上杏那
春の朝鳥がきれいにしゃべってる江東区立東砂小学校 六年 髙橋想來
夏祭りみこし空まで持ち上げる静岡学園中学校 三年 宮村 圭
天の川空が遠くてつかめない鹿児島市立坂元中学校 三年 子島悠飛
赤いみちたどるように林檎剥く学習院女子中等科 三年 西村理子
ひまわりはアップルパイのかおみたい土佐市立高岡第一小学校 三年 野瀬悠吏
ばあちゃんち跣であるく木の廊下山口大学教育学部附属光中学校 三年 長沼美波
のぼりぼうたかくのぼれたあきのそら江東区立第一亀戸小学校 一年 田中奏多
青空を貸し切りにして運動会江東区立有明小学校 六年 安井彬人
こおろぎは静かになったら鳴いてくる江東区立東砂小学校 五年 川鍋彩羽
【佳 作】
風船が空に吸われて終戦日 大分市立大在小学校 五年 秦野琥羽
ベランダの手すりをはじく春の雨 町田市立南中学校 二年 山口花音
雨つぶは涙みたいにふって来る 南あわじ市立志知小学校 三年 船本紗世
庭先のあじさい一輪雨のにおい 鹿児島市立坂元中学校 一年 小野由莉子
はくちょうがぐんぐんぐんとおよいでる 美濃加茂市立太田小学校 二年 今井蒼音
ばあちゃんにやきいもおいしくやけました 高岡市立伏木小学校 四年 井菜々海
秋探し寂しい顔のすべり台 学習院女子中等科 三年 皆川彩葉
ラムネ瓶滴る水に青い空 枚方市立小倉小学校 五年 山本宇架
青森で最初は雪をかく仕事 江東区立浅間堅川小学校 四年 清野太翔
藍色の額紫陽花と雨の色 山口大学教育学部附属光中学校 三年 梶本心咲
秋日和よそいきのふくなびかせる 江東区立豊洲北小学校 四年 別所和佳奈
こすもすがゆれるわらっているみたい 高岡市立伏木小学校 一年 今井 尊
弟が生意気になる夏休み 大分市立大在小学校 五年 太田美結
校ていに小さな風の九月かな 足立区立中川北小学校 五年 山地光星
カーテンのすきまの光春近し 江東区立豊洲北小学校 四年 満行悠衣
長谷川櫂 選
【特 選】
父がつくる雑煮の味は母の味山口大学教育学部附属光中学校 三年 久保めぐみ
お母さんのいない家族を想像した。雑煮もお父さんが作るのだが、お母さんが作っていた雑煮の味がする。どういう事情かわからないが、複雑な背景を表現している。たまたま、お父さんが雑煮を作っただけかもしれないが、それならそれで、また別の味わいがある。
終戦日影も子どももみな消えた大分市大在小学校 五年 松尾彩希
ウクライナやガザで大人たちが戦争をしている。そして誰よりも犠牲を強いられているのが、子どもたちという現実を前にして、子どもたちが戦争に関心をもつ、戦争という言葉を日常語として使う。それはしかたないことであるよりは、そうあるべきだろう。こんな時代、子どもの世界だけが楽園ではいられない。
あせいっぱいぼくのからだであそんでる土佐市立高岡第一小学校 五年 関 隆佑
身体中の汗の玉を遊んでいるととらえたところ。「ぼくのからだ」を遊び場にして。汗の玉一つ一つが命あるものに見えてくる。
【入 選】
いつもより兄弟でいる夏休み 大分市立大在小学校 五年 篠原奏太
けんかして心の中がうろこ雲 江東区立第二亀戸小学校 四年 中島颯希
鯉幟どこにもいけない受験生 玉城町立玉城中学校 三年 宮本徠翔
座禅して頭の中も雪景色 古河市立総和中学校 三年 小岩大和
何気ない親の一言稲光 玉城町立玉城中学校 三年 木村優峨
恐竜がたんじょうすれば夏がくる 都立立川国際中等教育学校附属小学校 二年 萩野 優
風にのる落ち葉は空のぼうけんか 江東区立第二亀戸小学校 一年 松坂美空
夜食とる母の愛情重すぎる 仙台市立郡山中学校 三年 黒田春美
せんぷうきいくないくなとくびをふる 西宮市立春風小学校 二年 安部穂乃香
び生物見ているつゆのけんびきょう 高岡市立伏木小学校 四年 阿久津結羽
【佳 作】
はざくらのはのかげわいわいおどってる 江東区立平久小学校 三年 松本歩花
大空をいろんな風で泳ぐ鯉 足立区立花畑第一小学校 六年 綱島汰一
口の中湯気ふく焼き芋活火山 江戸川区立南篠崎小学校 四年 柳沢悠斗
どんぐりのサイズがちがうぼうしかな 江東区立第二亀戸小学校 四年 戸倉煌希
夏舞台汗の量だけ変われるか 大阪市立都島中学校 三年 上江洲つばめ
ひがん花花びらおちてもえている 江東区立第一亀戸小学校 二年 三浦永都
サングラス外すと世界光りだす 麗澤中学校 三年 大滝友翔
終わりゆく中三の日々桜かな 浜松市立北部中学校 三年 古𣘺瑞稀
いますぐにはしりだしたいとかげかな 世田谷区立桜丘小学校 三年 濱﨑 葵
戦争だ我が我がと扇風機 玉城町立玉城中学校 三年 藤川廉真
画用紙にくっついているせみのから 江東区立第二亀戸小学校 三年 金指 蓮
夕立といっしょに帰る午後三時 江東区立第一亀戸小学校 五年 瀧澤彩妃
いやなこと全部ふきとぶせんぷうき 江東区立第二亀戸小学校 六年 青山孟生
初日だけ気合が入る夏休み 江東区立平久小学校 六年 西 篤輝
たいやきの少しとまどう一口め 仙台市立郡山中学校 三年 奥山詩音
日本学校俳句研究会が選ぶ二十句
バレンタイン余ったチョコと嘘をつく 山口大学教育学部附属光中学校 三年 山根温花
バレンタインデーに「本命」と言って渡すことができず、「余った」チョコと嘘をついてしまった。照れてくさい気持ちがとても伝わってきます。下の句の「嘘をつく」と表現したところに気持ちが集約されている一句です。
せんせいにあかちゃんできるあきのそら 江東区立豊洲北小学校 一年 太田真帆
大好きな先生に赤ちゃんが生まれると知り、嬉しいけれど、寂しい。秋の空のように晴れ渡っているけれど、同時に切なさを感じる。一言では表せない気持ちと、季語とが響き合っている句です。
夜食とる母の愛情重すぎる 仙台市立郡山中学校 三年 黒田春美
試験勉強をする作者に対して、お母さんが夜食を届けます。母の子を思う愛情と、いつの間にか成長している作者の母を思う微妙な心情との交錯が伝わってきます。
せみとったぼくよりよろこぶおじいちゃん 京都女子大学附属小学校 二年 浮村聡一
作者は祖父に蝉捕りの極意を学んだのでしょう。木に止まっている蝉をうまく捕獲できた喜びは格別なもの。自分より興奮している祖父とそれを見つめる作者。二人の関係がよく伝わってきます。
風船が空に吸われて終戦日 大分市立大在小学校 五年 秦野琥羽
風船は希望・平和な日常・人の命などの象徴でしょう。その風船が「空に吸われる」という表現に、戦争は終わったけれど、戦争によって大切なものをなくした喪失感や虚しさが伝わってきます。
かくれんぼトンボはぼくを見つけてる 徳島文理小学校 四年 中村健汰
かくれんぼをしている時のこと。鬼役の友だちは自分のことをまだ見つけていませんが、トンボとは静かに目が合っています。息をひそめて隠れている様子がよく表現されています。
引っぱるなふとんのとりあい二回戦 江戸川区立北小岩小学校 四年 内田花音
兄妹で布団の取り合いをしているのでしょうか。寒い時期は、布団がより恋しくなります。近くで寝ている家族と、ふとんを取り合う微笑ましい様子が想像できます。
弟が生意気になる夏休み 大分市立大在小学校 五年 太田美結
夏休みになり、弟と過ごす時間が長くなる作者。家で、旅先で、様々な場面で、弟の成長を感じます。「生意気になる」の表現に弟への複雑な気持ちが伝わる一句です。
五月雨弁慶眠る巌かな お茶の水女子大学附属中学校 三年 鈴木文華
修学旅行で平泉の中尊寺に行ったのでしょうか。弁慶の墓の前で歴史に思いを馳せている様子が目に浮かびます。「五月雨」の季語が弁慶を偲んでいるようです。
ばあちゃんち跣であるく木の廊下 山口大学教育学部附属光中学校 三年 長沼美波
おばあちゃんのお家には、昔ながらの木の廊下があるのでしょう。「跣」の足裏の木の感触。少しひんやりとした心地よい感触は、おばあちゃんの思い出と共にずっと心に残ることでしょう。
髪洗ふ今日の失敗流れゆく 鹿児島市立坂元中学校 二年 住本愛恵
「髪洗ふ」は元々夏の季語。かつては特別な行事でもあったそうです。高温多湿の日本では、特に気持ちがさっぱりします。失敗した悔しさや悲しさまでもシャワーで洗い流されていく様子がよく伝わります。
しかたなくおふろにはいるこどもの日 都立立川国際中等教育学校附属小学校 二年 AMGALAN BILIG
不思議な句です。楽しい一日でお風呂に入りたくないのか、菖蒲の香りは苦手だけど伝統だからしかたないのかなど、「しかたなく」の言葉で様々なことを想像させます。
いますぐにはしりだしたいとかげかな 世田谷区立桜丘小学校 三年 濱﨑 葵
このとかげは少し臆病なのか、それともまだ幼いのか。シュッと逃げることはしないけれども、すぐにも逃げたそう。作者は、とかげの様子をじっと見て、今のとかげの気持ちを読み取りました。
砂利道で日焼けしたうで祖母に貸す 江東区立平久小学校 六年 小松原彩
足元の悪い道を、祖母と一緒に歩いている。小さい頃は手を引かれていたのに、今は日に焼けた自分の腕が祖母を支えている。誇らしいような、照れくさいような夏の日のひとコマが見える句です。
蚊の声で夢の続きを逃したり お茶の水女子大学附属中学校 二年 杉本那瑠
もうすこし寝たいけど、蚊の羽音に邪魔されて、起こされてしまいました。折角素敵な夢を見ていたのに、続きを見られなくなってしまった残念な気持ちが素直に表されています。
父がつくる雑煮の味は母の味山 口大学教育学部附属光中学校 三年 久保めぐみ
ご両親仲睦まじく過ごしていた様子が目に浮かびます。父がつくるお雑煮は自然と母の味になっていたのでしょう。特別なお雑煮ですね。家族思いの優しいお父さん。心和む俳句です。
令和6年能登半島地震 見舞金のお願い
石川県立輪島漆芸技術研修所
所 長 小森邦博
日頃より当研修所の事業にご理解とご協力を賜り誠にありがとうございます。今回の地震の報道に、皆様さぞお心を痛めていらっしゃることと思います。私を含め職員、講師の先生方、研修生達も胸が張り裂けそうな思いです。
地震以降、見舞金、寄付金に関するお問い合わせが数多く寄せられております。見舞金の受け付けについて、次のとおりご案内いたします。集まった見舞金は研修生の生活再建や道具購入等、有効に活用させていただきます。
1・見舞金額 任意
2・振込口座 北國銀行 七尾支店(ホッコクギンコウ ナナオシテン)普通 60859
口座名義 輪島漆研被災研修生見舞金(ワジマシッケンヒサイケンシュウセイミマイキン)
恋の俳句大賞(2023年後期)大賞は澤谷さん
【大賞】
あの人の手紙よく燃ゆ寒昴 澤谷美咲
【作者のコメント】
負の気持ちで生み出した句が、このような形で返ってきて、とても嬉しいです。これで手紙も成仏したと思います。
☆村松二本 選
【特選】
隠しとほせしかコートの襟をたて 小栗正子
失恋は僕の血となり肉となり 北村友一
あの人の手紙よく燃ゆ寒昴 澤谷美咲
【入選】
冬薔薇枯れても薔薇でいたかった 井上秀子
初恋の大願成就初詣 髙橋基
きみの首筋ゆふぐれと檸檬の香 秋さやか
嘘を付く君の唇冬薔薇 円美々
友達に戻る時間の銅鑼が鳴る 松田早苗
きっかけを探るりんごの咀嚼音 足立有希
かささぎの橋のたもとで逢ひませう 鹿沼湖
☆趙栄順 選
【特選】
デートは七時初漁は初みやげ 山下守
春待つや癌生還の妻に恋 岩田勇
君がそう言うなら春はクリームパン 八田昌代
【入選】
革ジャンの右肩ばかり濡れて駅 げばげば
好きならば離してはだめ風船 城内幸江
ソーダ水愛も減っていくのかしら 矢入榮留
薫風の学食しずか初デート 折田祐美子
恋も手編みのセーターも解く夜 高津佳子
☆長谷川櫂 選
【特選】
初恋のレモンソーダ注文中 小林寛久
晴れ予報のバレンタインデーららら 遠藤玲奈
雪こそは真冬の恋のキューピット 峯岸泰希
【入選】
初恋は三寒四温のもどかしさ 石井秀一
春待つや癌生還の妻に恋 岩田勇
霜柱あなたザクザク恋の音 井上秀子
新しき出会いの春の片思い 紅紫あやめ
失恋を未だ知らざる虹なりき 田中目八
好きならば離してはだめ風船 城内幸江
レース編むやさしい恋の終わり方 綾竹あんどれ
あの人の手紙よく燃ゆ寒昴 澤谷美咲
りんご飴向こうとこっちより舐める 熊本芳郎
シクラメン十八からの想ひ人 益田信行
1月 きごさい+報告 「文化交流と相互理解」
1月6日、第32回きごさい+がズームで開催されました。講師は董振華さん。中国北京のご出身で、現在は東京を拠点に俳人として、翻訳家として活躍されています。董さんよりご講演の概要をいただきました。
文化交流と相互理解 董 振華
新年早々、「きごさい+」のズーム交流会に参加出来て、真にありがとうございました。いつの時代でも文化交流は人と人、ひいては国と国との間の相互理解のための大事な手段です。
幼少時代、日本の映画、ドラマ、漫画、アニメの影響で日本に興味を持ち、大学では日本語を専攻し、就職後は日中交流の仕事に携わってきました。今回は文化交流の中で特に印象深かった二つのことについてお話しします。
Ⅰ 俳句と漢俳
一つは私を俳句の世界に導いてくださった金子兜太師との出会い。「董君は日中両国の言語が出来る。俳句を通して、将来、両国の文化交流と相互理解に役立つ人になるんだ。君にはそれができる。俺は信じる。」と力強く言っていただいたことは忘れない。
一九八〇年、大野林火を団長に日本の俳人訪中団(兜太も参加)が北京を訪れた。北海公園の?膳飯店で開かれた歓迎会で、当時の中国仏教協会の趙朴初会長が俳句に倣って三首の三行詩を詠んで、歓迎の意を表わした。そのうちの一首は下記のとおり。
緑蔭今雨来 緑陰に今雨来たり
山花枝接海花開 山花、枝接ぎて海花が開く
和風起漢俳 和風 漢俳を起こさん
五・七・五の形と中国語の漢字で綴られたこの三行詩は、後に漢俳の誕生を意味する。
翌年の四月に、林林、袁鷹が俳人協会のお招きにより訪日し、漢俳の形式、特色及び俳句との関り等について、山口誓子、大野林火、鷹羽狩行等の俳人の方々と意見を交換した。同時に「俳句と漢俳の架け橋に」を題とする文を『俳句』誌に発表。同年六月号の『詩刊』に趙朴初、林林、袁鷹三氏の「漢俳試作」十五首を掲載。これが漢俳の初めての公開的デビューである。「詩刊」の編集者も専ら「漢俳は中国詩人が日本の俳句詩人との交流の中で生まれた新詩体で、俳句の十七音(五、七、五)の形式と、押韻を加えた三行十七文字の短詩で、絶句、小令、或いは民謡に似ており、短くて凝縮した表現、文語、口語、抒情、写景どちらでもよい」と説明を付け加えた。続いて同年八月八日の「人民日報」に趙朴初、林林、袁鷹等の「漢俳試作」を掲載。これをきっかけに、「漢俳」は急速に中国全土に広がり、各界各層の人々が試作を始めた。一九八二年日本の『文芸用語基礎知識』、一九八八年の『中国新文学大系・詩歌』にはどちらも漢俳作品が収録されており、漢俳が新詩体としての文学的地位を確立した。
それからまもなく日本では一九八九年、国際俳句交流協会が創立した。それに呼応するかのように九〇年杭州で「和歌俳句研究会」、九三年上海で「上海俳句漢俳研究交流協会」、九五年北京で「中国歌俳研究中心」等が次々と発足。特に二〇〇五年北京で「中国漢俳学会」創立に際し、兜太を団長に三十五名が日本から祝賀に参会した。これにより漢俳は一層発展を遂げ、現在、漢俳の人口は一万人にものぼる。
Ⅱ 日本の物差しと中国の物差し
二つ目は交流の中で、相互理解を図るためには、相手国の文化や風俗習慣を知るのが大事であることを説明した。
〇「一衣帯水」共通した風俗
両国は二千年に及ぶ交流の中で、全く同じか或いは似通って風俗習慣を持つに至った。昔、日本が中国文化を吸収した際、習俗も一緒に日本に伝えられた。後に中国では変化が生じてからも、日本ではそれがずっと保存されてきた。
まず、古代中国から日本に伝わったものを言うと、羽根を揺らし、ひからびた籾米を吹き飛ばす唐箕、米を篩い分ける竹製の篩、穀物を掃く箒、土地を均すための熊手等があるが、これは皆江蘇省や浙江省から伝わってきたものである。
衣食住においても、両国には似通う部分が多く見られる。例えば、和服のゆったりした振袖は古代中国の服装の特徴である。また、日本の伝統的な居間には畳があって、そこには履物を脱いで入り、じかに座るが、これも中国古代の風習。一七〇〇年前、晋代の「管寧、席を分ける」という物語がある。菅寧と華歆は元々同窓生だったが、華歆は金と権力に目が眩んだため、菅寧は彼と席を分ける、つまり袂を分かつことになった。この物語は当時地面に直に座る習慣があったことを示している。
そして、暖簾といえば、日本ではこれを「暖簾」と書くが、もとは禅家が寒さを凌いだところから、その名が付いた。日本では、家に暖簾を掛けて、日の光を遮り、埃を防ぎ、外部の耳目を遮り、お店では暖簾を宣伝広告の代わりに使う等して、中国より用途が広範に渡る。
なお両国間には、お正月、端午の節句、お盆、重陽の節句等の多くの共通する祝日がある。日本では、端午の節句があり、男の子のいる家では子供の幸運と健康を祈って、庭に鯉幟を立てるが、中国でも鯉崇拝の風習がある。二千年余り前に、孔子に息子ができ、魯国の王様が鯉を送って祝福したため、孔子は息子を孔鯉と名づけた。現在中国では、春節(旧正月)を過ごす時に、子供が鯉を抱く絵を室内に貼ったり、大晦日に鯉の料理が出て、「年々有余」(年と共により多くのゆとりがもてるよう」と祈る。中国語のゆとりの意味を持つ「余」と「魚」との発音が同じだからである。
〇「求道存異」小異を認め、郷に入れば郷に従え
中国と日本の民俗習慣の共通点は枚挙に暇はないが、相違点も多くある。
話し方について:中国人は喋るにしろ、何かをするにしろ、単刀直入に意志を表現することを好むが、日本人の喋り方は相手に探りを入れつつ、遠まわしを表現します。かくして、中国人は日本人のことを回りくどくてはっきりしないと思い、日本人は中国人のことを単純でぶっきらぼうだと見なす。
持て成し方について:中国人が客をもてなすと、テーブルを埋め尽くすぐらいに肉や魚を振る舞い、置く場所がなくて皿を重ねることもある。日本人の場合は食器の美しさ、料理の種類の豊富さ、色の鮮やかさが重んじられ、量そのものは適度が好まれる。日本人は中国人のことを見栄え張りで無駄が多いと見なし、中国人は日本人をけちだと見なす。
数字好みの相違について:中国人は贈り物をする時に、偶数を贈るのが重視しており、日本人は奇数が好きだ。しかし奇数でも九は例外がある。九は単数の中で一番大きく、吉数として広く使われる。例えば、古代の中国の領土は「九州」と呼ばれ、天の高い所を「九天」「九宵」などと言った。紫禁城の部屋数は九九九九間とされ、宮殿の門にも横も縦も九つの釘が打たれ、表門と二番目の門の間にある目隠し塀には、九匹の龍が彫られ九龍壁と呼ぶ。日本ではこれと相反して、九には「苦」と同じ発音があり、九階のないホテルや九番の座席がなかったりする。
色彩好みの相違について:中国では鮮やかな色彩が好まれる。黄色は皇帝専用の色で、平民は使ってはならない。赤は縁起のいい色で、一番広く使われる。例えば、旧正月に紅い紙に対句を書いたり、子供が生まれて満一ヶ月の時には赤く染めた卵を食べ、結婚式で新郎は胸元に赤くて大きい花を付け、新婦は赤い服か赤い花柄の付いた服を着用する。一方、葬式では、白い麻布の喪服を着て、白い花を付け、白い靴を履くため、不吉な色と見なされてきた。これとは相反して、日本人は淡い色合いが好きで、特に白は高貴さや神聖さといったイメージがあるので、新婦は白いウェティングドレスに身を包み、新郎は黒い燕尾服(えんびふく)を着て、白いネクタイをしめる。
両国間の風俗習慣については枚挙に暇がありませんが、以上を持って両国の民俗の共通点、相違点そして交流について簡単に紹介させていただきました。
「俳句と漢俳」の話にしても、「日本の物差しと中国の物差し」の話にしても、文化交流は人々の意志疎通や国家間の相互理解にとって必要不可欠なことです。今日の話が少しでも相互理解のきっかけとなり、皆様の役に立てれば幸いに思います。ご清聴ありがとうございました。
講座の後、句会が開かれました。
句会報告 選者=董振華、長谷川櫂
◆ 董振華 選
【特選】
金の箔浮いてくるお茶お元日 森永尚子
三が日ただ月だけの青白し 奈良握
【入選】
破魔矢いま鈴を鳴らして落ちにけり 三玉一郎
揚げたての油条一本七日粥 森永尚子
初山河見たくて街の天辺へ 宮本みさ子
駅見ゆる席でコーヒー四日かな 金澤道子
元日や能登揺れて国みな揺るる 長谷川櫂
悴みてますます星と近くゐる 三玉一郎
能登揺れて荒海揺れて海鼠揺る 長谷川櫂
牛曳きし犂曽祖父の冬田打 石川桃瑪
暁天に若水汲みき桶の音 石川桃瑪
しんかんと星ひとつある二日かな 三玉一郎
お降りが濡らす襷や箱根路へ 奈良握
◆ 長谷川櫂 選
【特選】
揚げたての油条一本七日粥 森永尚子
【入選】
天地玄黄火鍋に年を惜しみけり 葛西美津子
手ぬぐひにいろはにほへと花の春 飛岡光枝
轟きて龍寝返るや冬の海 飛岡光枝
新年のいきなり揺らぐ秋津洲 葛西美津子
3/16(土) ズームできごさい+ 「心ときめく雛祭りの菓子」
さまざまなジャンルから講師をお迎えして季節や文化に関わるお話をお聞きする「きごさい+」。
今回の講師は、きごさい+ではおなじみの虎屋文庫の中山圭子さん。
会場で開催の時は虎屋さんのご協力でお菓子付きの講座でしたが、今回もZoomを使ったオンライン開催のため残念ながらお菓子は配れません。講師の中山さんから「雛菓子とお茶を傍らにご参加いただけましたら幸いです。」とコメントをいただいております。
講演の後、句会もあります。(選者:中山圭子、長谷川櫂)
演 題 : 心ときめく雛祭りの菓子
講 師 : 中山 圭子(なかやま・けいこ)
プロフィール:
東京藝術大学美術学部芸術学科卒業。四季折々の和菓子のデザインの面白さにひかれて、卒論に「和菓子の意匠」を選ぶ。
現在、和菓子製造販売の株式会社虎屋の資料室、虎屋文庫の主席研究員。
著作に『事典 和菓子の世界 増補改訂版』(岩波書店)、『江戸時代の和菓子デザイン』(ポプラ社)、『和菓子のほん』(福音館書店)など。
菱餅 (写真提供:虎屋文庫)
講師のひと言
3月3日は女子の健やかな成長を祝う雛祭り。愛らしい雛人形はもちろん、菱餅や雛あられほか、色とりどりの雛菓子が魅力的な、心ときめく行事です。今回は雛菓子の歴史や意匠などについてお話ししたいと思います。
3日を過ぎる開催になりますが旧暦で雛の節句を祝う地域もありますので、雛菓子とお茶を傍らに、楽しんでいただけましたら幸いです。
日 時:2024年3月16日(土)12:30~15:00 (12:15~ Zoom入室開始)
12:30~13:45 講演
13:50~14:20 句会(選句発表)
14:20~15:00 長谷川櫂(きごさい代表)との対談、質疑応答
今回はいつもより1時間早い12:30開始です。ご注意ください。