リレーエッセイ007 五人囃子が怖い! 藤 英樹
正直に言うと、子どものころから雛人形は苦手だった。その表情になんとなく恐怖を感じたのだ。親戚の家などで雛の間に寝所が取られると、なかなか寝付けなかった。さすがに大人になったいまはそうでもないが、うっすらと苦手意識は残っている。
先日、北鎌倉の「鎌倉古陶美術館」を訪ねた。北鎌倉駅を降りて円覚寺の少し先。歩くとみしみし音がする蔵のような建物で、毎年雛祭が近づくと所蔵の雛人形を展示している。団子のような丸顔の次郎左衛門雛、アルカイックな微笑をたたえる享保雛、目鼻立ちがくっきりとした古今雛や有職故実にのっとった有職雛もある。
眺めていて、はたと気づいた。私が長年感じていた恐怖はどうやら、五人囃子に対してであった。能の太鼓、大鼓、小鼓、笛、謡を奏しながらも彼らは天皇、皇后への不測の事態に備えて刀を差し、目は笑っていない。油断なく周囲に注意を払っているように見えた。指を近づけようものならすかさず抜刀して切りかかる凄みを感じた。
「そんな大げさな」と笑われる方、五人囃子を一度じっくりと眺めてみてください。(季語歳理事 写真=新潟県三条市今井邸の雛飾り)
