リレーエッセイ011 八十八夜 稲田恵子
立春から数えて八十八日目を八十八夜と言います。今年は5月2日。春から夏に移る節目のこの日は、霜も降りなくなり安定した季節に入るころ。苗代のもみまきにも最適な頃で、農作業も一段と忙しくなります。「八十八」を組み合わせると「米」という字になり、豊作を願う農家にとっては、縁起のいい大切な日とされてきました。
一方で、「八十八夜の忘れ霜」「さつき寒」とも言われ、急に気温が下がって霜が降り、農作物に思いがけないぬ被害を与えることもあります。八十八夜はこれを警戒し、冷害を回避する目安の日でもありました。
「霜なくて曇る八十八夜かな」 正岡子規
「霜害を恐れ八十八夜待つ」 高浜虚子
文部省唱歌「夏も近づく八十八夜、♪♪」のメロディーが思い浮かびます。茶畑に昔ながらの赤いたすきにかすり姿の娘たち。八十八夜に摘み取られお茶は極上で、古来より不老長寿の縁起物の新茶として珍重されてきました。(季語歳監事、写真=広島地方での茶摘風景)
