狸(たぬき)三冬
【子季語】
たのき、狢
【解説】
日本各地の藪地や人家近くの森などに住む犬に似た夜行性の小動 物。狐と並んで人に親しまれ、化ける動物と考えられてきたが、 腹鼓を打つなどとぼけたおかしみがある。毛皮はコートや筆に利 用され、肉は狸汁として食される。
【科学的見解】
タヌキは、ネコ目(食肉目)イヌ科の哺乳類で、北海道のみに生息するエゾタヌキと東北から九州まで広く分布するホンドタヌキの二亜種に分けられている。
両亜種共に、人里近くの低地から山地までの農耕地周辺で生活し、住宅地や都市部に住み着いている個体も存在する。主に夜間に活動し、小型動物や果実・木の実なども採食する。糞は決まった場所にする傾向があり、蓄積された糞塊のことをため糞と呼んで痕跡(フィールドサイン)の一つになっている。昼間は樹木根元の樹洞やアナグマの古巣などで休息する。一夫一妻制で、春複数出産後、共同で仔育てを行う。生まれたばかりの幼獣は全身黒色をしていて、親と体色は異なる。キツネ同様にダニ類の寄生による疥癬症を発症した個体を見かけることがあり、発症した個体は寄生によりかゆみが生じるためにかきむしってしまったのか、一部もしくは全身の毛が抜け落ちている。(藤吉正明記)
【例句】
鞠のごとく狸おちけり射とめたる
原石鼎「花影」