冬の鹿(ふゆのしか) 三冬
【解説】
鹿は冬になると全身灰褐色となり、そのわびしく弱々しい風情は秋の交尾期を迎えた鹿とは違った趣である。冬の森では保護色として働く。
【科学的見解】
ノロ(ノロジカ)は、ウシ目(偶蹄目)シカ科の哺乳類で、ヨーロッパから中国や朝鮮半島までに広く分布する。体長は百から百三十センチメートルで、五センチメートルほどの短い尾を持つ。体色は夏毛が赤茶色、冬毛が灰褐色となり、尻や尾部は白毛が生えている。角はニホンジカ同様に年一回生え変わり、先端は三つに枝分かれするが、全体の長さは短いところが特徴である。昼夜問わず活動し、樹木や草の葉などを主食とする草食動物である。
近縁種としては、中央アジアから極東地域に生息するシベリアノロジカやアジア東部に生息するキバノロなどが知られている。キバノロは、上顎の犬歯が発達していて牙のようになっていることからその名が付けられた。(藤吉正明記)
【例句】
冬の鹿頸細々と木枝嗅ぐ
長谷川かな女「雨月」