破芭蕉(やればしょう、やればせう)晩秋
【子季語】
芭蕉の破葉、破れ芭蕉
【解説】
芭蕉のみずみずしい大きな葉が秋の風雨にさらされ、葉脈に沿って裂けている状態をいう。
【科学的見解】
バショウは、バショウ科バショウ属の多年草で、関東以西の地域で栽培されている。世界全体でバショウ属植物は五十種以上が存在するが、それらの中でも最も北に生育する種として知らている。本種の葉は大型で、長さ二メートル程となり、風雨の影響で次第に葉脈に沿って裂けていく。その様子に風情を感じ、櫛芭蕉や破芭蕉等の植物季語が付けられている。沖縄等の亜熱帯地域では、本種より小型で芭蕉布作りに活用されている繊維植物のリュウキュウバショウ(イトバショウ)も存在している。(藤吉正明記)
【例句】
鶴鳴や其声に芭蕉やれぬべし
芭蕉「奥細道拾遺」
芭蕉葉や音も聞かさず破尽す
梅室「梅室家集」
やれ芭蕉こころ此ほどものぐさき
白雄「白雄句集」
荒寺や芭蕉破れて猫もなし
正岡子規「子規全集」
芭蕉破れて繕ふべくもあらぬ哉
正岡子規「子規全集」
芭蕉破れて書読む君の声近し
正岡子規「子規全集」
絣着ていつまで老いん破芭蕉
原石鼎「原石鼎全句集」