朝顔(あさがお、あさがほ)初秋
【子季語】
牽牛花、西洋朝顔
【関連季語】
昼顔、夕顔、夜顔
【解説】
朝顔は、秋の訪れを告げる花。夜明けに開いて昼にはしぼむ。日本人はこの花に秋の訪れを感じてきた。奈良時代薬として遣唐使により日本にもたらされた。江戸時代には観賞用として栽培されるようになった。旧暦七月(新暦では八月下旬)の七夕のころ咲くので牽牛花ともよばれる。
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。文学での言及
展転び恋ひは死ぬともいちじろく色には出でじ朝貌の花 作者不詳『万葉集』
我が目妻入は放くれど朝貌の年さへこごと吾は放るがへ 作者不詳『万葉集』
高円の野辺の容花おもかげに見えつつ妹は忘れかねつも 大伴家持『万葉集』
うちつけにこしとや花の色を見むおく白露の染むるばかりを 矢田部名実『古今集』
君こずば誰に見せましわが宿の垣根に咲ける朝顔の花 よみ人しらず『拾遺集』
【科学的見解】
朝顔は、ヒルガオ科サツマイモ属の一年生の蔓性植物。原産地はアジア。葉はハート形で表面に細かい毛を有する。茎は蔓で左巻き。花は漏斗状で花径は十センチくらい。夏から秋にかけて開花する。花の色は、白、紫、紅、藍などさまざま。日本で鑑賞用に改良され、大輪や変わり咲き、斑入りなど多くの園芸種がある。山上憶良の「萩の花尾花葛花撫子の花女郎花また藤袴朝顔の花」『万葉集』の「朝顔」は桔梗または木槿の花であるとされる。また、日本の在来の朝顔としては、野朝顔(ノアサガオ)が存在し、関東以西の海岸付近から沖縄にかけて自生している。ノアサガオの開花期は、四月から一二月まで幅広い。その他、外来種としてアサガオ類は暖地を中心に複数種自生している。(藤吉正明記)
【例句】
朝貌や昼は錠おろす門の垣
芭蕉「炭俵」
あさがほに我は飯くふおとこ哉
芭蕉「虚栗」
あさがほの花に鳴行蚊のよわり
芭蕉「句選拾遺」
朝顔は酒盛知らぬさかりかな
芭蕉「笈日記」
蕣(あさがほ)は下手の書くさへ哀也
芭蕉「続虚栗」
蕣や是も又我が友ならず
芭蕉「今日の昔」
三ケ月や朝顔の夕べつぼむらん
芭蕉「虚栗」
わらふべし泣くべし我朝顔の凋(しぼむ)時
芭蕉「真蹟懐紙」
僧朝顔幾死かへる法の松
芭蕉「甲子吟行」
朝がほや一輪深き淵のいろ
蕪村「蕪村句集」
あさがほや夜は葎のばくち宿
去来「菊の香」
蚊屋ごしに蕣見ゆる旅寝哉
士朗「枇杷園句集」
朝顔の垣や上野の山かつら
正岡子規「子規句集」
朝貎や咲いた許りの命哉
夏目漱石「漱石全集」
朝顔を一輪挿に二輪かな
高浜虚子 「七百五十句」
朝がほや濁り初めたる市の空
杉田久女「杉田久女句集」
朝顔の紺のかなたの月日かな
石田波郷「風切」