芭蕉(ばしょう、ばせう)初秋
【子季語】
芭蕉葉、芭蕉林
【解説】
バショウ科の熱帯性植物。長円形の大きな葉は、風雨にさらされて簡単に破れてしまう。これを秋の季語としたのは、この葉の弱さが秋風ともあいまって、もののあわれを誘うせいであろう。
【科学的見解】
芭蕉(バショウ)は、バショウ科バショウ属の多年草である。高さは、約五メートルとなり、バナナに似た果実を付けるが、バナナほど大きくはならない。バショウ属の中では、最も耐寒性があるため、関東以西で栽培されている。原産地は不明である。近縁種として、琉球芭蕉(リュウキュウバショウ)が存在し、沖縄に自生している。芭蕉布として有名な織物は、リュウキュウバショウの繊維(茎の表皮)が使用されている。(藤吉正明記)
【例句】
この寺は庭一盃の芭蕉かな
芭蕉「俳諧曾我」
曙や芭蕉をはしる露の音
蝶夢「草根発句集」
露はれて露のながるるばせをかな
白雄「白雄句集」
野鳥の上手にとまるばせをかな
一茶「九番日記」
さらさらと白雲渡る芭蕉かな
正岡子規「新俳句」
したゝかに雨だれ落つる芭蕉かな
内藤鳴雪「春夏秋冬」
舷のごとくに濡れし芭蕉かな
川端茅舎「川端茅舎句集」
幹打てば水の音して芭蕉かな
長谷川櫂「蓬莱」
芭蕉の葉ばさりばさりと翻る
長谷川櫂「蓬莱」