芍薬(しゃくやく/しやくやく)初夏
【子季語】
貎佳草、花の宰相
【解説】
ボタン科の多年草。牡丹に似ているが、牡丹は木、芍薬は草であ る。園芸種が多く、花色も純白から深紅まで、変化に富む。薬の原料として用いられてきた歴史もある。
【科学的見解】
シャクヤクは、チベットから中国に自生する多年草であり、現在では温帯域で盛んに育種が進められ、多くの園芸品種が作出されている。本種は、薬草として平安時代以前に導入されたが、その後は観賞用として品種改良が行われてきた。日本の野山にも近縁の種が自生しており、本州関東・中部以西から九州まで分布するヤマシャクヤクと北海道から九州まで広く分布するベニバナヤマシャクヤクが知られている。(藤吉正明記)
【例句】
芍薬を如意にもち行く御僧哉
竜眠「誹諧新選」
芍薬の蕊の湧き立つ日南(ひなた)かな
太祇「誹諧新選」
芍薬やおくに蔵ある浄土寺
大江丸「俳懺悔」
芍薬のつんとさきけり禅宗寺
一茶「八番日記」
芍薬の蕾をゆする雨と風
前田普羅「春寒浅間山」
芍薬を剪るしろがねの鋏かな
日野草城「花氷」
芍薬をぶつきらぼうに提げて来し
長谷川櫂「古志」
芍薬のなかばねむりてゐるかたち
高田正子「花実」