草餅(くさもち) 仲春
【子季語】
蓬餅、草の餅、母子餅、草団子
【解説】
蓬の柔らかい新芽を餅に搗き込んで作るが、近年では冷凍保存した蓬もよく使われる。香りのよさと若草色が特徴で、餡を包んだものもある。蓬餅ともいうが、かつては母子草(春の七草のひとつ、ごぎょう)を使ったので、母子餅ともいった。現在も地方によっては、母子草を使った草餅が作られている。草の香りが邪気を祓うとして、三月三日の上巳の節句に食べる風習があった。
【来歴】
『毛吹草』(正保2年、1645年)に所出。
【例句】
両の手に桃と桜や草の餅
芭蕉「泊船集」
おらが世やそこらの草も餅になる
一茶「七番日記」
ふやふやの餅につかるる草葉かな
一茶「七番日記」
雛様をなぐさめ顔の蓬餅
正岡子規「季語別子規俳句集」
草餅の重の風呂敷紺木綿
高浜虚子「六百五十句」
草餅や野川にながす袂草
芝不器男「不器男全句集」
子をおもふ憶良の歌や蓬餅
竹下しづの女「はやて」
草餅に焼印もがな草の庵
村上鬼城「鬼城句集」
類なき母の力や草の餅
長谷川櫂「蓬莱」