粽(ちまき) 初夏
【子季語】
粽結う、茅巻、粽解く、笹粽、筒粽、飾粽、菰粽、飴粽、巻笹、巻笹売り
【解説】
餅菓子のひとつ。一般に、新粉や葛粉で作った生地や羊羹を笹の葉で包み、蘭草で縛り蒸したもの。端午の節供に用いるのは、古代中国の屈原の伝説にちなむという。屈原は詩人としても名高い楚国の政治家で、悪政を憂え、汨羅(べきら)の淵に投身。命日の五月五日に用意された供養物が、粽のルーツとされる。日本では平安時代の端午の儀式に用意されているが、当時は米を茅(ちがや)や真菰(まこも)の葉で巻き、煮たと考えられる。甘い菓子として広まるのは江戸時代で、全国各地には、葉の種類や形も異なるさまざまな粽がある。
【例句】
粽結ふ片手にはさむ額髪
芭蕉「猿蓑」
あすは粽難波の枯葉夢なれや
芭蕉「六百番発句合」
賑に粽解くなり座敷中
路通「旅袋」
文もなく口上もなし粽五把
嵐雪「炭俵」
粽ほどく手もとは似たり経の紐
北枝「草苅笛」
粽解いて蘆吹く風の音聞かん
蕪村「蕪村句集」
粽とく二階も見ゆる角田川
一茶「七番日記」
がさがさと粽をかじる美人かな
一茶「七番日記」
先づ三つを神にたむけて菰ちまき
来山「太胡蘆呵佐」
あはれさは粽に露もなかりけり
正岡子規「子規全集」
草の戸の粽に蛍来る夜かな
正岡子規「子規全集」
粽解く葭の葉ずれの音させて
長谷川櫂「果実」