早乙女(さおとめ、さをとめ) 仲夏
【子季語】
さうとめ、五月女、月乙女、五月乙女、早女房、田植女、植女
【関連季語】
田植、早苗
【解説】
田植を行う女性をいう。昔は田植の祭儀にかかわる女の人が田の神に仕える装いとして、紺の単衣に赤い帯、白い手拭をかぶり、紺の手甲脚絆、菅笠のそろいの姿で一列にならんで苗を植えた。
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【文学での言及】
雨過ぐる真菅の小笠かたよりに小田の早乙女早苗とるなり 『夫木和歌抄』
【実証的見解】
さおとめの「さ」は、さなえの「さ」、さなぶりの「さ」などと同様に、「田の神」にささげる稻のことをさす。早乙女は、田の神に仕える乙女であり、「諸社の神田を植うる女のこと」(『滑稽雑談』)であった。
【例句】
五月乙女にしかた望まんしのぶ摺
芭蕉「曾良書留」
早乙女の下り立つあの田この田かな
太祇「太祇句選後編」
早乙女の五月雨髪や田植笠
許六「桃の杖」
かつしかや早乙女がちの渉し舟
一茶「題葉集」
早乙女の祭りのやうに揃ひ出る
涼莵「花橘」
さをとめや汚れぬ顔は朝ばかり
其角「句兄弟」
早乙女やひとりは見ゆる猫背中
召波「春泥発句集」
早乙女や泥手にはさむ額髪
村上鬼城「定本鬼城句集」
早乙女の一群すぎぬ栃の花
前田普羅「飛騨紬」
早乙女の股間もみどり透きとほる
森澄雄「花眼」
早乙女の笠あぐるたび海青く
長谷川櫂「松島」