薔薇(ばら) 初夏
【子季語】
西洋薔薇、しようび、花ばら、薔薇園、そうび
【関連季語】
茨の花、薔薇の芽、秋薔薇、冬薔薇
【解説】
薔薇は初夏、美しく香り高い花を咲かせる。茎には鋭い棘がある。観賞用に植えられるほか香水などにも利用される。花の色も形もさまざまで、園芸登録されているものでも一千種を超える。和名の「ばら」は、棘のある植物「うばら」「いばら」が転訛したもの。
【来歴】
『毛吹草』(正保2年、1645年)に所出。
【文学での言及】
我はけさうひにぞ見つる花の色をあだなるものといふべかりけり 紀貫之『古今集』
【科学的見解】
バラは、一般的に総称として使われており、庭園栽培や切り花として利用されている種は、セイヨウバラと呼ばれている。セイヨウバラは、古い時代に野生バラから改良を加えることで生み出されてきた雑種であり、現在では生み出されて園芸品種は数千を超える。花は、元々年一回の開花であったが、中国のコウシンバラとの交配で、年数回開花する四季咲きの性質を獲得し、日本の野生種であるノイバラとの交配で、細く高く枝を伸ばすつる性の性質が加わり、その品種群の性質は色彩から香りや形まで多様化している。(藤吉正明記)
【例句】
針ありと蝶に知らせん花薔薇
乙由「類題発句集」
一輪ざしに活けたる薔薇の二輪哉
正岡子規「子規全句集」
病癒えて力無き手や薔薇を折る
正岡子規「子規全句集」
己れ刺あること知りて花さうび
高浜虚子「六百五十句」
トランプを投げしごと壺の薔薇くづれ
渡辺水巴「水巴句集」
反射炉を守りて薔薇を剪り呉れし
川端茅舍「華厳」
薔薇むしる垣外の子らをとがめまじ
杉田久女「花衣」
手の薔薇に蜂来れば我王の如し
中村草田男「長子」
咲き切つて薔薇の容(かたち)を超えけるも
中村草田男「美田」
おうおうと金春家いま薔薇のとき
森澄雄「鯉素」
眠る嬰児水あげてゐる薔薇のごとし
飯田龍太「山の木」
紙箱に莟の薔薇を剪りそろへ
長谷川櫂「果実」