卯の花(うのはな) 初夏
【子季語】
空木の花、花卯木、初卯の花、卯の花月夜、卯の花垣
【関連季語】
箱根空木の花、卯の花腐し
【解説】
空木の花のこと。開花は五月中旬~六月頃。白く清々しい花を咲かせる。古歌には月光のようとも雪のようとも詠われる。旧暦四月(卯月)ころ咲くことからこの名がある。茎が空洞なので空木(うつぎ)ともいう。「夏は来ぬ」の唱歌にも歌われているように、夏の訪れを感じさせる花である。
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【文学での言及】
卯の花の過ぎば惜しみか霍公鳥雨間も置かずこゆ鳴きわたる 大伴家持『万葉集』
ほととぎす我とはなしに卯の花のうき世の中になきわたるらむ 凡河内躬恒『続古今集』
夕月夜ほのめく影も卯の花のさけるわたりはさやけかりけり 藤原実房『千載集』
【科学的見解】
空木(ウツギ)は、ユキノシタ科ウツギ属の在来の落葉低木。北海道南部から九州までの山野に自生し、生垣などにも利用される。よく枝分かれし、高さは二メートルくらいになる。卵形の葉は対生し、縁に鋸歯をもつ。五月から六月にかけて、円錐花序を多くのばし白い小花を多数つける。ウツギに似た白い花咲かせる近縁種としては、マルバウツギ、ツクシウツギ、コウツギ、サクラウツギ、オキナワヒメウツギなどが知られている。(藤吉正明記)
【例句】
卯の花も白し夜なかの天の川
言水「新撰都曲」
梅恋ひて卯の花拝む涙かな
芭蕉「野ざらし紀行」
卯花も母なき宿ぞ冷じき
芭蕉「続虚栗」
卯の花やくらき柳の及びごし
芭蕉「別座舗」
卯の花をかざしに関の晴着かな
會良「奥の細道」
卯の花のこぼるる蕗の広葉かな
蕪村「蕪村句集」
卯の花は日をもちながら曇りけり
千代女「真蹟」
卯の花や茶俵作る宇治の里
召波「春泥発句集」
卯の花や盆に奉捨をのせて出る
夏目漱石「漱石全集」