虎耳草(ゆきのした) 仲夏
【子季語】
雪の下、鴨足草、虎の耳、畸人草
【解説】
梅雨どきに滴りを浴びる岩かげなどで、リボンを結んだような白い小さな花が群がって咲く。冬、葉が雪の下で枯ずにあることからこの名がある。「鴨足草」は、五弁の花の形が鴨の足に似ていることによる。「虎耳草」は花の形が虎の耳を連想させるという漢名。
【来歴】
『毛吹草』(正保2年、1645年)に所出。
【科学的見解】
虎耳草(ユキノシタ)は、ユキノシタ科ユキノシタ属の多年草。日本在来の植物であり、本州から九州にかけて湿った岩の上などに自生するほか、薬用に栽培される。葉は円形に近く暗緑色で白い斑を持ち、裏は赤みを帯びる。株元から糸状の走出枝を多数出し、その先端部に新苗を生じて繁殖する。開花期は五月から六月。二十センチから四十センチくらいの花茎を伸ばし、先端に白い五弁の花をつける。三弁は小さく淡紅色の斑を持つ。二弁は大きく垂れ下がる。腫れ物などに効用があるほか、若葉は食用になる。(藤吉正明記)
【例句】
雪の下名のらで寒し花の色
越人「鵠尾冠」
日さかりの花や涼しき雪の下
呑舟「有磯海」
六月をしづめてさくや雪の下
東以「芭蕉庵小文庫」