天の川(あまのがわ、あまのがは) 初秋
【子季語】
銀河、明河、星河、銀漢、銀浪、雲漢、天漢、河漢、銀湾
【関連季語】
七夕、冬銀河
【解説】
初秋の澄み渡った夜空に帯状に横たわる無数の星。川のように見えるので、「銀河」「銀漢」ともいう。七夕伝説の織姫と彦星を隔てる川で、二人は年に一度、旧暦七月七日の夜にこの川を渡って逢うことをゆるされる。
【来歴】
『増山の井』(寛文7年、1667年)に所出。
【文学での言及】
天河あさせしら浪たどりつつわたりはてねばあけぞしにける 紀友則『古今集』
七夕のあふせたえせぬ天の川いかなる秋かわたりそめけむ 待賢門院堀河『新古今集』
【実証的見解】
天の川は太陽系を含む銀河系である。地球のある太陽系は円盤状の天の川銀河の端のほうに位置しており、中心部から約三万光年離れている。地球から見ると、天の川の中心部は濃く周縁部は淡く見える。いて座の方向が特に強く光っているのは、いて座の方向に銀河系の中心があるからである。北半球では一年中見ることができるが、春は低い位置に横たわり、冬は光が弱い。天の川が、一年中で最も高い位置にかかるのが初秋の八月であり、天の川はこのころ、最も明るく見える。天の川が初秋の季語になっているのもそのためである。
【例句】
荒海や佐渡に横たふ天の川
芭蕉「奥の細道」
水学も乗物かさんあまの川
芭蕉「江戸広小路」
眞夜中やふりかはりたる天の川
嵐雪「其便」
打たゝく駒のかしらや天の川
去来「西の雲」
江に添うて流るゝ影や天の川
暁台「暮雨巷句集」
喪の家を早く傾ぶけ天の川
乙二「松窓乙二発句集」
一棹に舟漕入れよ天の川
士朗「枇杷園句集」
木曾山へ流れ入れけり天の川
一茶「一茶発句集」
天の川のもとに天智天皇と虚子と
高浜虚子 「五百句」
虚子一人銀河と共に西へ行く
高浜虚子 「六百五十句」
妻二タ夜あらず二タ夜の天の川
中村草田男「火の島」
天の川わたるお多福豆一列
加藤楸邨「怒濤」
天の川怒濤のごとし人の死へ
加藤楸邨「野哭」
天の川この世の果に旅寝して
長谷川櫂「初雁」