梨(なし)三秋
【子季語】
梨子、長十郎、二十世紀、洋梨、有りの実、梨売、梨園
【解説】
秋の代表的な果物の一つ。赤梨の長十郎、青梨の二十世紀など品種も多い。水分に富み甘みが強く、食味がさっぱりとしている。
【科学的見解】
梨は、日本の在来植物の山梨(ヤマナシ)を、栽培化及び品種改良して作出された果樹である。ヤマナシは、本州から九州の人里付近に分布する。ヤマナシの果実には、多くの石細胞が含まれているため、ジャリジャリとした食感がある。品種改良されたものは石細胞が少ない。西洋梨や中国梨と比べ、石細胞を有することが日本梨の特徴である。赤梨系や青梨系など多くの品種が存在する。(藤吉正明記)
【例句】
物干にのびたつ梨の片枝かな
惟然「藤の実」
小刀の刃に流るるや梨の水
毛条「松のそなた」
梨むくや甘き雫の刃を垂るる
正岡子規「子規全集」
仏へと梨十ばかりもらひけり
正岡子規「子規全集」
梨くふは大師戻りの人ならし
正岡子規「子規全集」
すゞなりの小梨に村の曇り哉
正岡子規「子規全集」
日毎日毎十顆の梨を喰ひけり
正岡子規「子規全集」
道元のつむりに似たる梨一つ
長谷川櫂「虚空」