葛の花(くずのはな)初秋
【解説】
マメ科の蔓性多年草。秋の七草の一つ、日当たりのよい山野、荒地に自生する。紅紫色の蝶形花で、上向きについた花穂は下から上へ咲きのぼる。大きな葉に隠れがちだが美しい花である。根から葛粉をとる。
【科学的見解】
葛(クズ)は、在来の植物であり、北海道から九州まで普通に見られる。花期は、八月から九月であり、香りの良い花を咲かせる。花を乾燥させて、葛花茶として利用する他、根に含まれた澱粉を採取・利用する。また、茎内には光沢のある繊維が含まれており、昔からそれらを取り出し葛布が作らててきた。現在でも、静岡県の掛川付近で葛布が生産されている。(藤吉正明記)
【例句】
取り沙汰も無事で暮れけり葛の花
凡兆「岨の古畑」
もやもやとしてしづまるや葛の花
山店「芭蕉庵小文庫」
山深み散るか凋むか葛の花
白雄「白雄句集」
葛の葉の吹きしづまりて葛の花
正岡子規「子規句集」
あなたなる夜雨の葛のあなたかな
芝不器男「芝不器男句集」
坊毎に懸けし高樋よ葛の花
杉田久女「杉田久女句集」
葛の花母見ぬ幾年また幾年
石田波郷「雨覆」
葛の花夜汽車の床に落ちてゐし
長谷川櫂「古志」