零余子(むかご)三秋
【子季語】
ぬかご、いもこ、零余子とり、珠芽
【解説】
自然薯、長薯、つくね薯などの蔓や葉が黄ばむ頃、葉腋にできる肉珠をいう。珠芽ともいう。緑褐色の粒であるが、大きさも形も色もさまざまである。茹でたり飯に炊き込んでむかご飯にしたりする。熟れてくるとほろほろこぼれ落ちる。
【科学的見解】
むかごは、ヤマノイモ類の葉腋に形成される繁殖体であり、むかごが土の中に入ると根と芽が出てきて新たな植物体となる。種子繁殖と同様に、子孫をつなぐ繁殖戦略の一つである。種子繁殖は、雄雌による遺伝子の受け渡しを有する有性生殖であるが、むかごは自身の体の一部(分身)であることから、無性生殖である。ヤマノイモ類のほかにむかごを作る植物としては、オニユリやカラスビシャクなどが知られている。(藤吉正明記)
きくの露落て拾へばぬかごかな
芭蕉「芭蕉庵小文庫」
笹竹の窓にはひこむぬかご哉
才麿「暁山集」
さむしろやぬかご煮る夜のきりぎりす
北枝「北枝発句集」
うれしさの箕にあまりたるむかごかな
蕪村「蕪村句集」
ほろほろとむかご落ちけり秋の雨
一茶「文化句帳」
むかごもぐ稀の閑居を訪はれまじ
杉田久女「杉田久女句集」