鶸(ひわ、ひは)晩秋
【子季語】
真鶸、紅鶸、小紅鶸、金雀、金翅雀
【解説】
鶸にはいくつかの種類があるが、真鶸は雀よりやや小ぶりで、黄 緑の羽色が美しい。十月ごろ、シベリア地方から大群となって渡 ってきて、冬期には十数羽の群にわかれて低山帯で過ごす。チュ イーンチュイーンと高く澄んだ声で鳴く。
【科学的見解】
鶸は、アトリ科の一部の野鳥の総称で、具体的にはカワラヒワ、マヒワ、ベニヒワ、コベニヒワ等が知られている。中でもカワラヒワは、全国的に広く分布し、南西諸島では冬鳥であるが、それ以外の地域では留鳥として生息している。カワラヒワの嘴は桃色で、翼の中央には黄色の帯があるのが特徴である。マヒワは、本州中部以北の亜高山帯針葉樹林で一部繁殖が知られているが、基本的には冬鳥として渡来する。マヒワは、翼以外に頭部や腹部も黄色になるため、カワラヒワと黄色の割合の違いで区別することができる。(藤吉正明記)
【例句】
鶸渡る空や寺子の起き時分
浪化「浪化上人日記」
鶸鳴くや杉の梢に日の残り
柏後「野梅」
砂丘よりかぶさつて来ぬ鶸のむれ
鈴木花蓑「鈴木花蓑句集」