火鉢(ひばち)三冬
【子季語】
瀬戸火鉢、鉄火鉢、箱火鉢、長火鉢
【解説】
暖房器具のひとつ。その中に炭を熾し、手足を焙って暖をとる。木製、金属製、陶製などがある。部屋全体や全身を温めることはむずかしいが、五徳を立てて鉄瓶などをかけたり、燗をつけたりと暮らしになじみ深いものだった。今では他の暖房器具にとってかわられ、ほとんど見かけなくなったが、真っ赤に熾った炭火の色は懐かしい。
【例句】
舟君の泣くかほみゆる火鉢かな
蓼太「蓼太句集三編」
ぼんのくぼ夕日にむけて火鉢かな
一茶「享和句帖」
明ほのゝ番所にさむき火鉢かな
露川「小弓俳諧集」
独居やしがみ火鉢も夜半の伽
秋色女「いつを昔」
客去つて撫る火鉢やひとり言
嘯山「葎亭句集」
火鉢抱いて瞳落とすところ只畳
原石鼎「花影」