沙羅の花(しゃらのはな)晩夏
【子季語】
夏椿、杪羅、姫沙羅
【解説】
ツバキ科の落葉高木。十メートルほどの丈になる。白い花びらに黄色の蕊をもつ。咲いてもその日のうちに落ちてしまう一日花。花の形が椿に似ていることから「夏椿」ともいう。釈迦入寂の「沙羅双樹」とは別の木である。
【科学的見解】
シャラノキの標準和名は、ナツツバキである。ナツツバキは、ツバキ科の落葉高木で、本州福島県以南から九州までの山地に自生し、また花が大きくて美しいことから観賞用として庭木や公園木として身近なところにも植栽されている。花は夏に開花し、花弁は白色、黄色の雌しべは付け根で合着して筒状になるため茶筅のような形をしている。近縁種としては、ヒメシャラが知られており、ヒメシャラの花柄は一センチ以下であるのに対して、ナツツバキは一センチから六センチほどになるため、その違いや花冠の大きさ等で区別がつく。(藤吉正明記)
【例句】
花を拾へばはなびらとなり沙羅双樹
加藤楸邨「まぼろしの鹿」
沙羅の花捨身の落花惜しみなし
石田波郷「酒中花」
沙羅の花緑ひとすぢにじみけり
石田波郷「酒中花」