苗代(なわしろ、なはしろ) 晩春
【子季語】
苗田、親田、苗代田、苗間、のしろ、岡苗代、苗代水、苗代粥、苗代道
【関連季語】
苗床
【解説】
稲の種籾を蒔いて育てる水田のこと。雪解のころに田打をはじめ、八十八夜前後に種を蒔く。
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【文学での言及】
わぎもこが門田に植うる早わせの苗代水をいかにひかまし 藤原基俊『堀河百首』
【実証的見解】
苗代は、幅一メートルほどの区画で土を盛り上げ軽く耕したもの。そこに、十分水を吸わせた種籾を一平方センチ辺り一粒程の目安で蒔く。そこに土や籾殻を薄くかぶせ、ひたひたになる程度に水を張り発芽させる。苗が二十センチくらいになったら、苗を抜き取り田に植える。
【例句】
水澄みて籾の芽青し苗代田
支考「笈日記」
苗代や鞍馬の桜ちりにけり
蕪村「蕪村句集」
苗代に雨緑なり三坪程
正岡子規「子規句集」
ゆたかなる苗代水の門辺かな
松本たかし「松本たかし句集」
苗代の月夜ははんの木にけむる
長谷川素逝「素逝句集」
子鴉や苗代水の羽づくろひ
内藤鳴雪「鳴雪句集」
けふできて光り一日苗代田
森澄雄「花眼」
紐をもて苗代の水囲ひたり
長谷川櫂「天球」