リレーエッセイ035 菱餅 中山圭子
3月3日は雛祭。女子の成長を祝うこの日には、菱餅や雛あられほか、お雛様や桃、貝などをかたどった可愛い菓子が目を楽しませてくれる。
こうした雛菓子は江戸時代後期にはあったが、昔と今の大きな違いといえば、菱餅の色があげられるだろう。現在、菱餅は紅白緑で作られるのが定番だが、かつては緑と白の組み合わせが一般的で、緑は草餅で作ったり、代用の意味からか、青粉で染めたりしたという。
そもそも3月3日の上巳(じょうし)の節供は、厄払いを行う日。身の穢れを紙などで作った人形(ひとがた)に移して川に流したり、母子(ははこ)草(春の七草の一、ごぎょう)で作った草餅を食べたり、無病息災を願うことが重視された。江戸時代に雛人形を飾る雛祭が定着したあとも、雛人形を流したり、草餅(おもに蓬を使用)を食べたり、かつての風習は多少形を変えつつも受け継がれていく。女性の象徴ともいわれる菱形の餅に草餅を使うのも、厄払いの意を思えば、当然だろう。
そうした昔の習俗が気になる私は、雛祭の様子を描いた江戸時代の錦絵を見ると、ついつい菱餅をさがし、その色を確認してしまう。緑と白の組み合わせに、「やはり…」と思うことが多い。(虎屋虎屋文庫専門職、写真=江戸時代の菱餅再現、虎屋文庫提供)
