リレーエッセイ044 ほおずき市 福島光加
この日におまいりすると4万六千日分のご利益があるという7月9日と10日、東京浅草の浅草寺で開かれるほおずき市は数あるほおずき市の中でもよく知られている。
鉢を買い求めるときは、青い葉の下に、まだ青いほおずきがたくさんついているのをしっかり確認する。がくが成長して袋状になり果実をつつむ部分は緑色からだんだんと赤橙色に変化していく。それはこの漢字、(鬼灯)のように、次々と内に灯りがともっていくようにも見える。
夕闇が深くなると、照明のもと、売り手の紺の腹掛けにグリーンからオレンジ色のグラデーションがいっそうはっきりとみえてきてこの市の一帯だけが浮き上がった様な、別世界の雰囲気をかもし出し、人々の表情も生き生きとしてくるように思える。
ほおずきは花材にもなる。葉を取れば水なしでも充分その色を楽しむ事ができるので 花材の少ない夏には助かる。しかしお盆に仏壇にそなえることもあるからいける用途には気をつけたい。
知人で 花店を営むものがいるのだがある夏の終わりに会うと「今年のお盆はほうずきが売れなくて、残っちゃってねえ。、、、、、」と言う。それで、ほおずきが乾きだしたときに彼は一個づつ茎からはずし中から丸い実を取りだしてそのかわりにそこに灯りをいれたそうだ。ぜーんぶ売れてしまった!と言う。売れた数を聞いて驚いた。
そう、英語でほおずきは チャイニーズ ランタンプラント(Chinese Lantern Plant )と呼ばれる。ランタンは ちょうちんと言う意味があるので ひょっとしたら英語圏の人たちも 中国の薄暗い部屋の中に吊り下げられている赤いちょうちんを見てそう呼ぶようになったのかもしれない。
ほうずきのなかに小さなろうそくを入れたのか、いや、それでは危ないから今流行の熱の伝導のほとんどないLED をいれたのだろうか。肝心な事を聞き忘れてしまった。文字どおり、ほおずき色の灯りをどう作ったのか見てみたかった。自然のランプシェードを通した灯りはたくさん集まってもひとつだけでも美しかっただろうな、と思う。今年はほうずき市のあとくらいに、彼を呼び出してきいてみようと思っている。
ほうずきそのものは 秋の季語。本当の ほうずきの活躍は 実は夏の終わりなのかもしれない。(きごさい理事、写真=鬼灯市)
