「梅の菓子の魅力」きごさい講座報告
1月17日(日) 神奈川近代文学館で「第5回きごさい講座+句会」を開きました。
講座のテーマは「梅の菓子の魅力」、講師は中山圭子氏(虎屋取締役 虎屋文庫専門職)。
今回の講座は和菓子研究の第一人者でもある中山圭子さんが講師。テーマの和菓子が季節を愛でる歳時記そのものでもあることから、俳句を詠む人たちにとって極めて興味深い内容だった。
まず、和菓子の歴史からスタート。和菓子は「食べる芸術」と言われているが、起源をたどれば、木の実や果物、餅、団子になる。
日本の菓子に影響を与えた外来の食物として
① 遣唐使らが伝えた「唐菓子」
② 中国へ留学した僧がもたらした「点心」。例えば、羊羹は羊の肉を素材にした食物であったが、小豆を使い羊肉の汁物に見立てた精進料理に変化した。
③ 金平糖、カステラ、鶏卵そうめん、ぼうろなど宣教師らがもたらした「南蛮菓子」
砂糖はかつて、貴重品だったので、甘い菓子ばかりではなかった。茶の湯の流行が和菓子発展の跡押しをする。
和菓子は江戸時代に大成
和菓子文化は、江戸時代に砂糖が本格的に流通してから、菓子屋が商売として成り立つようになり、洗練されたデザインと味の上菓子が考案された。都である京都で発展し、公家、大名をはじめ町人階級にも普及、贈物にも多用された。
中山さんが次々と映像で紹介する、江戸時代の菓子の雅な意匠の絵図帳が面白く、和菓子の奥深さを知る。当時から、視覚、味、触感、匂い、聴覚・・・五感で味合う工夫が随所にされていることに感嘆した。
デザインのモチーフとしては①植物(桜、梅、菊、楓、つつじ・・・)②動物(鶴、亀、千鳥、雁、鮎、鶯)③自然現象(霧、雲、雪、雨)④風景⑤生活用品(扇、巾着、短冊)などが使われ、これらは、源氏物語や古今集などの古典文学のシーンと結び付けられて、創作されることも少なくなかったという。
そして、梅の和菓子についてのお話
A)春を告げる、百花の魁としての梅=寒紅梅、霜紅梅 オリジナルなデザインの注文受託も盛んだった。
B)馥郁たる香り=江戸時代は夜の梅を梅林に出かけ楽しむ風習があった。
C)姿、形の美しさ=光琳梅が理想
D)吉祥=めでたさの花としての梅、松竹梅
E)君子のイメージ&学問との結びつき=菅原道真の連想など。
梅と梅の菓子をテーマに、和歌が引用され、梅の意匠絵図が映し出され、梅にまつわる様々なエピソードが語られた。和菓子の色彩感覚はかさねの色に通じる美意識がある、焼き印ひとつでも独自の作品となる、季節を先どりする、見立て、古典を下敷きにする発想…干菓子のための桜の木で作った木型も実際に見せていただく。和菓子は、銘も色もデザインも味も…長い歴史と季節感と物語をまとって引き継がれていることや、また新作への果敢な挑戦も行われていることも教えられた。
レクチャーの後の句会では、梅の菓子の句が続出、選者にもなられた中山さんは、「たくさん和菓子の句が出て、ほんとうにうれしいです。この場でみなさんが、すぐに俳句にしてしまうことに驚きました。お菓子関連句は全部書き写しました」と笑顔で感想を述べられ、大きな拍手を浴びた。 (西川遊歩記)
句会報告: 選者:中山圭子、長谷川櫂
◆中山圭子 選
*特選
糸結びひとつで凧の上機嫌 西川遊歩
一睡の夢のかたちや桜餅 趙栄順
点心といふ言の葉のあたたかな 長谷川櫂
星屑の降りて薄氷結びけり 鈴木伊豆山
この国の梅を讃へてお菓子かな 上田雅子
一棹の羊羹重く春着かな 澤田美那子
ふくよかに黒豆蜜に鎮もりて 久根下豊子
*入選
雛あられ空から降つて来しごとく 趙栄順
夜の梅味はふほどに背すじ伸び むらたともみ
羊羹の黒光りして日向ぼこ 佐川あけみ
◆長谷川櫂 選
*特選
一睡の夢のかたちや桜餅 趙栄順
沖合の春を知らせて汽笛かな 北島正和
一棹の羊羹重く春着かな 澤田美那子
光琳の梅のひとつの開きけり 飛岡光枝
鶴にあけ鶴に暮れゆく出水かな 金澤道子
雛あられ空から降つて来しごとく 趙栄順
羊羹の黒光りして日向ぼこ 佐川あけみ
初句会梅の世界に遊びけり 上田雅子
この国の梅を讃へてお菓子かな 上田雅子
*入選
一人分の七種粥や緑濃く 澤田美那子
この丘に花のさきがけ寒紅梅 大平佳余子
流れゆく浮雲一つ切山椒 むらたともみ
梅一輪淡海の諸子よき頃か 片山ひろし
善哉で二十日正月祝はんと 木下洋子
還らばや花びら餅と一椀と 鈴木伊豆山
寒紅梅ここからをんな太陽に 鈴木伊豆山
桜の木より打ち出して桜菓子 澤田美那子
いにしへの春となりけり梅花餅 木下洋子
羊羹の切り口ぽつと夜の梅 大平佳余子
□次回の「第6回きごさい講座+句会」は4月17日に横浜で開きます。ふるってご参加ください。
■ 第6回きごさい講座+句会
日 時: 4月17日(日)13:30~16:30(開場13:10)
会 場: 神奈川近代文学館 中会議室 (横浜市、港の見える丘公園)
講 座: 日本に魅せられたプラントハンターとシーボルト
(講師=西川遊歩、大岡信研究会会長)
句 会: 当季雑詠5句(選者=西川遊歩、長谷川櫂)
□できれば、事前にお申込みください。もちろん申し込みなしでの当日参加もできます。
きごさい事務局 TEL&FAX 0256-64-8333
□ 参加費: きごさい正会員1,000円、非会員2,000円 (当日受付)
