リレーエッセイ016 ミッドサマー 飛岡光枝
歌人・永田和宏さんのエッセイ『もうすぐ夏至だ』(白水社刊)はこう始まる。「もうすぐ夏至だ。冬至の日はうれしい。これからどんどん明るくなるのだと思うと、まだ真冬だというのに心が明るむ。夏至は嫌だ。あとは明るい時間がどんどん短くなってゆくばかり」この作品の背後には夫人・河野裕子さんの闘病という重い現実があるのだが、一文は「夏至」に対する日本人の気持ちをよく表していると思う。
冬の厳しいヨーロッパでは夏至の祭がさかんに行われる。シェークスピアが『夏の夜の夢』で描いたように短い夏を思い切り楽しみ、豊穣や恋の成就を祈って歌い躍る。それに対し日本の夏至は梅雨のさなか、湿度の高い厳しい夏を間近にひかえて、喜んでばかりはいられない。
でも、せっかくの夏至をもう少し楽しみたいものだ。冬至の柚湯にならって、夏至には柚の花を湯船に浮かべたらどうだろう。さわやかな香りで、梅雨のうっとうしさも解消されよう。柚の花の入浴剤が売り出されるのなら、商品名は悪戯好きの妖精にちなんで「パック」と名付けてほしい。媚薬効果も期待できそうだ。(季語歳理事 写真=百合の丘)
