安居(あんご)三夏
【子季語】
夏安居、雨安居、夏、夏行、一夏、夏籠、夏勤、結夏夏入、夏の始、 夏百日、一夏九旬
【関連季語】
夏断、夏書、夏花、冬安居、夏解
【解説】
夏に僧が一室に籠り修行すること。陰暦四月十六日から七月十五日まで。日本では禅宗で現在も行われている。
【来歴】
『増山の井』(寛文7年、1667年)に所出。
【実証的見解】
安居はサンスクリット語(梵語)でvarsa(ヴァルシャ)、雨に関する意を訳したもの。インドで始まった安居の本来の目的は雨期に活発になる草木や昆虫、小動物に対する無用な殺生を防ぐため、個々に活動していた僧が、一定期間ひとところにこもって修行しようというもの。釈迦在世中より始まったとされる。その後、仏教のとともに中国や日本にも伝わり、現在でも禅宗では、その修行が続いている。安居に入る「結制」は旧暦の四月十六日ころ、安居が明ける「解夏」は旧暦の七月十五日ころ、供えられる仏華を「夏花」、写経を「夏書」という。この期間修行僧たちは寺から一歩も外に出ず修行に精励する。
【例句】
しばらくは滝に籠るや夏の始め
芭蕉「奥の細道」
夏百日墨もゆがまぬこころかな
蕪村「落日庵句帳」
夏籠のけしきに植し小松かな
一茶「文化六年句日記」
夏籠や種々に聞なす鐘の声
嘯山「葎亭句集」
夏籠や仏刻まむ志
正岡子規「子規句集」
夏籠や月ひそやかに山の上
村上鬼城「鬼城句集」
飲食のもの音もなき安居寺
篠原鳳作「海の旅」
夏行して磨り減らしたる硯かな
長谷川櫂「果実」