鮎(あゆ)三夏
【子季語】
香魚、年魚、鮎生簀
【関連季語】
若鮎、落鮎、鮎狩、鮎汲、通し鮎
【解説】
夏の川魚の代表。川の水や苔の香りのするところから香魚と呼ばれる。味は淡白で上品。塩焼き、鮎鮓、鮎膾、うるかなど、食べ方はいろいろある。余すところなく食べられ、はらわたの苦味は珍味とされる。鮎漁の解禁は、川によって異なるので注意。
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【文学での言及】
松浦河河の瀬光り年魚釣ると立たせる妹が裳の裾濡れぬ『万葉集』
隼人の瀬戸の巌も年魚走る芳野の瀧になほしかずけり 大伴旅人『万葉集』
【実証的見解】
アユ科の魚。川の下流域で孵化した稚魚はいったん海に入りプランクトンなどを食べて成長する。五センチくらいに成長した鮎は川に戻り、三月から五月ころにかけて遡上を始める。川の上流から中流域にたどり着いた幼魚は櫛形に変形した歯で、岩などに付着したケイソウ類を主食とする。一段と大きくなった鮎は縄張りを作るようになり、縄張りに入ってくる別の鮎に攻撃を仕掛ける。この性質を利用した釣が「友釣り」である。秋になると鮎は、体が橙と黒の婚姻色に変化し、産卵のため下流へ落ち始める。このころの鮎は「錆鮎、落鮎」と呼ばれる。産卵した鮎は、体力を消耗して多くは死んでしまう。それゆえ鮎は、年魚ともいわれる。
【例句】
浮鮎をつかみ分けばや水の色
才麿「後しゐの葉」
飛ぶ鮎の底に雲ゆく流れかな
鬼貫「鬼貫句選」
またたぐひ長良の川の鮎鱠
芭蕉「己が光」
石垢になほ食ひ入るや淵の鮎
去来「雑談集」
釣竿に鮎のあはれや水はなれ
北枝「此花集」
かくぞあれ鮎に砂かむ夜べの月
太祇「太祇句稿」
鮎くれてよらで過ぎ行く夜半の門
蕪村「落日庵句集」
時鳥一尺の鮎串にあり
正岡子規「子規句集」
鮎食うて月もさすがの奥三河
森澄雄「鯉素」
鮎季の山の重なる京都かな
長谷川櫂「天球」