【解説】
厳寒の空にさえざえとある月。満月に近い寒月の夜は、冷たい月光が降り注ぎ建物の影や自分の影が地面に黒々と落ちる。いよいよ寒さが身に滲みて、帰宅の足も自ずと早まる。
【例句】
寒月や開山堂の木の間より
蕪村「新五子稿」
寒月や門を敲ば沓の音
蕪村「夏より」
寒月や僧に行き合ふ橋の上
蕪村「新選」
寒月や我ひとり行橋の音
太祗「太祗句選」
寒月の門へ火の飛ぶ鍛冶屋かな
太祗「太祗句選」
寒月に照りそふ関のとざしかな
几董「井華集」
寒月や喰ひつきさうな鬼瓦
一茶「七番日記」
寒月のおおいなるかな藁廂
星野立子「笹目」
同じ湯にしづみて寒の月明り
飯田龍太「忘音」