蓴生ふ(ぬなわおう/ぬなはおふ) 仲春
【子季語】
蓴菜生ふ
【解説】
春になって地下茎から蓴菜の新芽が伸びること。蓴は蓴菜のことでスイレンカ科の多年草。沼や池に自生する。葉と茎は寒天状の粘質物に被われる。春の新葉にはこの粘膜がことに多く美味。吸い物の具や酢の物にして食する。
【科学的見解】
蓴の標準和名は、ジュンサイである。ジュンサイは、ジュンサイ科(旧スイレン科)の多年生の浮葉植物であり、北海道から九州までの湖沼やため池に生育している。生育環境としては、やや酸性の水質を好むとされている。新芽は、分泌毛より出た粘物質で被われている。その新芽が美味であるために、東北地方を中心にため池などで栽培が行われている。(藤吉正明記)
【例句】
ぬはな生ふ池の水かさや春の雨
蕪村「蕪村句集」