霞(かすみ)三春
【子季語】
朝霞、昼霞、夕霞、春霞、草霞、霞の海、霞の衣、霞棚引く
【関連季語】
朧
【解説】
春の山野に立ち込める水蒸気。万物の姿がほのぼのと薄れてのどかな春の景色となる。同じ現象を夜は「朧」とよぶ。
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【実証的見解】
気象学では視程距離が一キロ以下のものを霧といい、その淡いものを霞とするが、霞は気象用語としては使われない。
【例句】
春なれや名もなき山の薄霞
芭蕉「野ざらし紀行」
大比叡やしの字を引て一霞
芭蕉「江戸広小路」
はなを出て松へしみこむ霞かな
嵐雪「玄峰集」
橋桁や日はさしながら夕霞
北枝「卯辰集」
狂ひても霞をいでぬ野駒かな
沾徳「合歓の花道」
高麗船のよらで過行霞かな
蕪村「蕪村句集」
草霞み水に声なき日ぐれ哉
蕪村「蕪村句集」
山寺や撞そこなひの鐘霞む
蕪村「題苑集」
指南車を胡地に引去ル霞哉
蕪村「蕪村句集」
荒あらし霞の中の山の襞
芥川龍之介「澄江堂句集」
夕霞片瀬江の島灯り合ひ
松本たかし「鷹」
白浪を一度かゝげぬ海霞
芝不器男「芝不器男句集」
雛を掌に乗せて霞の中をゆく
飯田龍太「山の木」
なきがらを霞の底に埋めけり
長谷川櫂「虚空」