鹿の子(かのこ)三夏
【子季語】
鹿の子(しかのこ)、子鹿、鹿の子斑
【関連季語】
孕み鹿
【解説】
鹿は夏に産まれる。背に白い斑がある。はじめは雄も角がなく二年目から生えてくる。公園などで飼われている鹿は人懐こく、見開いた大きな目は特に可愛らしい。
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【文学での言及】
時知らぬ山は富士の嶺いつとてか鹿の子まだらに雪の降るらむ『伊勢物語』
【実証的見解】
鹿は秋に交尾し、翌年の四月から六月にかけて出産する。母鹿を中心とした母子群は、おもに当年子と一年子で構成され、角の生えはじめた雄の子供は、出産直後、母親によって群れから追われる。
【例句】
春日野や若紫のそうがのこ
季吟「玉海集」
踏み分けてつづしを走る鹿子かな
麦水「葛箒」
灌仏の日に生まれあふ鹿の子哉
芭蕉「笈の小文」
うれし気に回廊はしる鹿の子かな
蝶夢「宰府紀行」
草の葉に見すく鹿の子の額かな
白雄「白雄句集」
八九間鹿の子見送る林かな
白雄「白雄句集」
苑日々に草深うなる鹿の子かな
日野草城「花氷」
鹿の子にももの見る眼ふたつづつ
飯田龍太「今昔」
鹿の子の生れて天地香しく
長谷川櫂「虚空」
仏性や母のおなかの鹿の子も
長谷川櫂「虚空」