蝙蝠(こうもり、かうもり)三夏
【子季語】
かはほり、蚊食鳥、家蝙蝠、大蝙蝠
【解説】
蝙蝠は夏の夕暮れ、音もなく飛ぶ。蚊食鳥ともいわれるが、鳥ではなくほ乳類。
【来歴】
『増山の井』(寛文7年、1667年)に所出。
【文学での言及】
人もなく鳥もなからん鳥にてはこのかはほりも君に尋ねん 和泉式部『夫木和歌抄』
【科学的見解】
コウモリ類は、コウモリ目(翼手目)に分類され、手の骨が長くなり、それらの間及び手と体側の間に飛膜が発達して空中を飛べるように進化した哺乳類である。日本国内では、四十種程度分布している。
いずれの種も夜間活動を行い、種により昆虫類を主食にしているグループと植物の葉や果実などを採食するグループに分けられる。昼間は大木などにできた樹洞や岩の割れ穴、鍾乳洞、隧道、廃坑、家屋屋根裏などの暗い場所において集団状態で休息している。日本では、唯一アブラコウモリ(イエコウモリ)が家屋を棲み処としているため、住宅地や都市部など人の身近でよく見かけるコウモリ類となっている。本種は、五から十グラム程度の重さで、背面と飛膜は灰褐色、腹面は白灰色をしている。日暮れ後に家屋から飛び立ち、超音波を利用することで獲物である昆虫類の位置と距離を把握し捕食している。利用する超音波の周波数は種により異なることから、コウモリ類の観察時にはバッドディテクターと呼ばれる超音波周波数を感知できる小型装置が活用されている。(藤吉正明記)
【例句】
かはほりやむかひの女房こちを見る
蕪村「蕪村句集」
かはほりのかくれ住けり破れ傘
蕪村「新花摘」
かはほりや月のあたりを立ちさらず
暁台「暁台句集」
かはほりや古き軒端の釣荵
暁台「暁台句集」
我宿に一夜たのむぞ蚊喰鳥
一茶「新集」
ぬかるみに木影うつらふ蚊喰鳥
富田木歩「定本富田木歩句集」
かはほりや晒布襦袢の肌ざはり
日野草城「花氷」