柳(やなぎ) 晩春
【子季語】
枝垂柳、糸柳、白楊、楊柳、柳の糸、川柳、遠柳
【関連季語】
柳の芽、柳絮、夏柳、柳散る、枯柳、掛柳
【解説】
柳といえば枝垂柳。春、柔らかい葉が煙るように美しいので春の季語とされる。街路や庭園、水辺などに植えられ、古くから、霊力のある木とされてきた。枝垂柳のほか、枝が上に向かって伸びる川柳などもある。
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【文学での言及】
わがせこが見らむ佐保道の青柳を手折りてだにも見むよしもがも 大伴坂上郎女『万葉集』
見渡せば柳桜をこきまぜて都ぞ春に錦なりける 素性法師『古今集』
青柳の糸よりかくる春しもぞ乱れて花のほころびにける 紀貴之『古今集』
【科学的見解】
柳は、ヤナギ科ヤナギ属の植物の総称であり、身近な種としては在来のタチヤナギやアカメヤナギなどが、外来としてはシダレヤナギが知られている。柳の多くは、水辺を好む植物であるため、河川付近に自生する他、シダレヤナギなどは水路沿い街路樹として植栽されている。(藤吉正明記)
【例句】
したがへば嵐も弱る柳かな
守武「都の花めぐり」
八九間空で雨降る柳かな
芭蕉「木枯」
青柳の泥にしだるる塩干かな
芭蕉「炭俵」
青柳の我からむすぶ仏かな
芭蕉「翁反古」
小鯛插す柳涼しや海士がつま
芭蕉「船庫集」
傘(からかさ)に押しわけみたる柳かな
芭蕉「炭俵」
はれ物に柳のさはるしなへかな
芭蕉「芭蕉庵小文庫」
引きよせて放しかねたる柳かな
丈草「青筵」
ぬれ色に春のうきたつ柳哉
許六「五老井発句集」
やなぎから日のくれかかる野道哉
蕪村「蕪村遺稿」
青柳や芹生の里のせりの中
蕪村「名所小鏡」
青柳や我大君の草か木か
蕪村「蕪村句集」
若草に根をわすれたる柳かな
蕪村「蕪村句集」
梅ちりてさびしく成しやなぎ哉
蕪村「蕪村句集」
出る杭をうたうとしたりや柳かな
蕪村「蕪村句集」
もつれつつ見事や雨の糸柳
樗良「樗良発句集」
舟かりて春見送らん柳陰
北枝「草刈笛」
いかづちのはるかにうごく柳哉
蓼太「蓼太句集」
夕汐や柳がくれに魚わかつ
白雄「白雄句集」
ややしばし煙をふくむ柳かな
暁台「暮雨巷句集」
透し見る舟景色よし江の柳
闌更「半化坊発句集」
恋々として柳遠のく舟路かな
几董「井華集」