椎の実(しいのみ/しひのみ) 晩秋
【子季語】
落椎/椎拾ふ
【解説】
ブナ科シイ属とマテバシイ属に属する樹木を椎といい、それらの実のこと。形は小粒の球形とやや大振りな細長の二種。炒ると香ばしく甘い。生食も可。古く縄文の頃より親しまれてきた。
【科学的見解】
椎は、ブナ科シイ属の植物に対する限定的な呼称であり、スダジイやツブラジイ等が含まれている。ともに本州から琉球までに野生もしくは街路樹や公園木として植栽されている常緑性の高木である。照葉樹林の代表種・優占種でもある。その堅果は小振りで、全体殻斗に覆われている。乾燥すると殻斗が剥け、中から堅果が零れ落ちる。果実には渋み成分であるタンニン類がほとんど含まれていないため食べやすく、脂質は少ないがデンプン質が多いため良い食料となる。果実は熟すまでに約二年かかる。(藤吉正明記)
【例句】
丸盆の椎にむかしの音聞かむ
蕪村「蕪村句集」
椎の実の落ちて音せよ檜笠
几董「井華集」
椎の実の板屋をはしる夜寒かな
暁台「暁台句集」
牛の子よ椎の実蹄にはさまらん
白雄「白雄句集」
椎の実を拾ひに来るや隣りの子
正岡子規「子規句集」
わけ入りて独りがたのし椎拾ふ
杉田久女「杉田久女句集」