春の風(はるのかぜ)三春
【子季語】
春風
【解説】
春に吹く風をいう。草花やこの芽を育み、鳥のさえずるを誘う、暖かく穏やかな風である。
【来歴】
『連理秘抄』(貞和5年、1349年)に所出。
【文学での言及】
春風は花のあたりをよきて吹け心づからやうつろふと見む 藤原好風『古今集』
【例句】
春風にふき出し笑う花も哉
芭蕉「続山の井」
片町にさらさ染むるや春の風
蕪村「蕪村句集」
春風や堤長うして家遠し
蕪村「安永六春興帖」
曙のむらさきの幕や春の風
蕪村「蕪村句集」
野ばかまの法師が旅や春のかぜ
蕪村「蕪村句集」
春の風草深くても古郷なり
一茶「享和句帖」
春風にこぼれて赤し歯磨粉
正岡子規「子規句集」
春風に尾をひろげたる孔雀かな
正岡子規「子規句集」
春風や闘志いだきて丘に立つ
高浜虚子「五百句」
耳の穴掘つてもらひぬ春の風
夏目漱石「漱石全集」
夕暮の水がとろりと春の風
臼田亜浪「亜浪句鈔」
春風や国の真中の善光寺
原月舟「月舟俳句集」
大空を吹く春風のごとくあれ
長谷川櫂「初雁」