朧(おぼろ)三春
【子季語】
草朧、岩朧、谷朧、灯朧、鐘朧、朧影、朧めく
【関連季語】
朧月、霞
【解説】
春、は空気中に水蒸気が多いので、像がぼんやりと潤んで見える。その現象を昼は霞といい夜は朧という。
【来歴】
『俳諧二見貝』(安永97年、1780年)に所出。
【例句】
辛崎の松は花より朧にて
芭蕉「野ざらし紀行」
鉢たたき来ぬ夜となれば朧なり
去来「猿蓑」
辛崎のおぼろいくつぞ与謝の海
蕪村「橋立の秋」
白魚のどつと生るるおばろかな
一茶「文化句帖」
怒濤岩を噛む我を神かと朧の夜
高浜虚子「五百句」
大門に閂落す朧かな
村上鬼城「鬼城句集」
薬園に伏樋のもるゝ朧かな
前田普羅「普羅句集」
風呂の戸にせまりて谷の朧かな
原石鼎 「花影」
夕月の既に朧や藪の空
松本たかし 「鷹」
ぬかるみに夜風ひろごる朧かな
渡辺水巴「水巴句集」
朧にて昨日の前を歩きをり
加藤楸邨「怒濤」
朧にて寝ることさへやなつかしき
森澄雄「四遠」
貝こきと噛めば朧の安房の国
飯田龍太「山の木」
朧夜の船団北を指して消ゆ
飯田龍太「涼夜」
さきがけて朧となりぬ観世音
長谷川櫂「蓬莱」
天井の紐揺れてゐる朧かな
高田正子「玩具」