お水取り(おみずとり、おみづとり) 仲春
【子季語】
水取
【関連季語】
修二会、若狭のお水送り
【解説】
奈良東大寺二月堂における修二会の行のひとつ。三月十二日深夜、堂近くの閼伽井から香水を汲み本尊の十一面観音に供える。この水は、天平時代より遠敷明神が若狭から送り届けるという時空を超えた霊水。これを中心に堂内外ではさまざまな祈の行法がある。これが終わると奈良に本格的な春が訪れる。
【来歴】
『わくかせわ』(宝暦3年、1753年)に所出。
【実証的見解】
「お水取り」は、三月十二日の夜から十三日の未明にかけて、若狭井から香水をくみ上げる行事である。十三日の午前一時半ころ練行衆の行列が二月堂から閼伽井屋に向かい、暗闇の中で香水がくみ上げられる。香水は閼伽桶入れられ、榊を飾った台に載せて内陣に運ばれる。この「香水」は、本尊の十一面観音に献じたり、供花の水として用い、残りは一般の参詣者にも分けられる。香水は、若狭の遠敷(おにう)明神が神々の参集に遅れた詫びとして二月堂本尊に献じことに由来する。今でも「お水取り」に先立って若狭小浜市の若狭神宮寺では、「お水送り」(三月二日)の行事が行われる。
【例句】
水取りや氷の僧の沓の音
芭蕉「野ざらし紀行」
沓の音水の音しぬ二月堂
大魯「発句題林集」
しら梅や若狭の水に夜の声
松瀬青々「妻木」
煤あびて我も籠人お水取り
長谷川櫂「蓬莱」