蕨(わらび) 仲春
【子季語】
岩根草、山根草、蕨手、早蕨、干蕨、蕨長く、蕨飯
【解説】
ワラビ科。山肌の日当たりの良いところにみられる春を代表する山菜。乳牛が食むと乳の出が悪くなるといわれるほどあくが強い。あく抜きをして、おひたしなどで食べる。
【科学的見解】
蕨(ワラビ)は、在来の夏緑性の多年生シダ植物であり、全国的に幅広く分布している。スギナのように栄養葉と胞子葉は分かれておらず、ワラビの場合は栄養葉の裏に胞子を含む胞子嚢群が形成される。栄養葉は、三回もしくは四回羽状複葉となり、葉柄を含む長さが一メートルになる場合がある。(藤吉正明記)
【例句】
一尺の蕨の外は松柏
沾徳「合歓の花道」
独活蕨何もおとさず旅の殿
去来「名月集」
蕨採りて筧に洗ふひとりかな
太祗「太祗句選後篇」
わらび野やいざ物焚ん枯つゝじ
蕪村「蕪村句集」
めぐる日や指の染むまでわらび折る
白雄「白雄句集」
負ふた子に蕨をりては持せける
暁台「暁句集」
折りもちて蕨煮させん晩の宿
蝶夢「草根発句集」
そゞろ出て蕨とるなり老夫婦
川端茅舎「川端茅舍句集」
蕨たけて草になりけり草の中
村上鬼城「鬼城句集」
国東(くにさき)の仏の国の蕨かな
森澄雄「白小」
背高童子こんがら童子初蕨
長谷川櫂「蓬莱」