七種(ななくさ) 新年
【子季語】
七草、七種粥、齊粥、若菜粥、七日粥、若菜の日、宵齊、二齊、若菜の夜、叩き菜、七種貰、七種もらい、七種売
【関連季語】
若菜摘
【解説】
一月七日の人日の節句。この日、七草を羹にしたり、粥や雑炊に炊き込んで食べると、一年の邪気を祓うとされる。春の七草は芹、薺(なずな)、御形(ごぎょう)、繁縷(はこべら)、仏の座、菘(すずな)、蘿蔔(すずしろ)をいう。
【来歴】『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【文学での言及】
春日口野のけふ七草のこれならで君をとふ日は何時ぞともなし 赤染衛門『家集』
君がため奈良のあしたの七くさに猶つみそへむよろづ代の春 権僧正公朝『夫木抄』
けふぞかし齊はこべら芹つみてはや七種のおものまゐらむ 慈鎮和尚『拾玉集』
七種の数にはあらねど春の野にゑぐの若葉もつみはのこさじ 藤原信俗実『新撰六帖』
芹齊五形はこべら仏の座菘すずしろこれぞ七種 『年中故事要言』
【実証的見解】
古代中国では、人日の節句(一月七日)に七種類の穀物を羹にして食べ無病を祈る習慣があった。日本でも最初は七種粥といえば、七種の穀物だったが、その後、穀物は春先の七種類の草に変わった。七種の菜は、前の晩に俎に乗せ「七草なずな唐土の鳥が日本の土地に渡らぬ先に」などと囃しながら叩き、当日の朝に粥に入れる。
【例句】
七草や明けぬに聟の枕もと
其角「五元集」
七草や袴の紐の片むすび
蕪村「蕪村句集」
七草や兄弟の子の起きそろひ
太祇「太祇句選後篇」
七草をうち出しけり母屋の灯
裸馬「昭和一萬句」
きぬぎぬや齊に叩き起こされつ
内藤鳴雪「鳴雪句集」
天暗く七種粥の煮ゆるなり
前田普羅「普羅句集」
香に籠る齊の粥や持仏堂
松瀬青々「妻木」
君が代の齊をはやす拍子かな
正岡子規「子規全集」
とけそめし七草粥の薺かな
星野立子「立子句集」
母許や春七草の籠下げて
星野立子「句日記Ⅰ」
萕粥仮の世の雪舞ひそめし
飯田龍太「今昔」