菖蒲(しょうぶ、しやうぶ) 仲夏
【子季語】
白菖、水菖蒲、あやめ、あやめぐさ、菖蒲髪
【関連季語】
かきつばた、あやめ、花菖蒲、菖蒲湯、菖蒲葺く、菖蒲引く、菖蒲酒
【解説】
端午の節句になくてはならない水辺の草。水中から剣のような緑の葉をのばし、夏に黄緑の小花をつける。葉には芳香がある。邪気を払う植物の一つであり、端午の節句には菖蒲湯を立て菖蒲酒を作る。古くは「あやめ」「あやめ草」といった。
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【文学での言及】
白玉を包みて遣らばあやめぐさ花橘にあへも貫(ぬ)くがね 大伴家持『万葉集』
ほととぎす鳴くや五月のあやめぐさあやめも知らぬ恋もするかな よみ人しらず『古今集』
【科学的見解】
菖蒲(ショウブ)は、サトイモ科ショウブ属の多年草。在来の植物であり、日本全国の池や沼などに繁茂する。水中の泥に根茎が横たわり、そこから芳香のある剣状の葉がのびる。五月から七月にかけて、茎の途中から黄緑色の肉穂花序(棒状の花)を出す。同属の植物として、セキショウが存在し、本州から九州の水辺に自生している。(藤吉正明記)
【例句】
あやめ草足に結ばん草鞋の緒
芭蕉「奥の細道」
しだり尾の長屋々々に菖蒲哉
嵐雪「嵐雪句集」
あやめ草綾の小路の夜明けかな
青蘿「青蘿発句集」
道すがら拾ひし菖蒲葺きにけり
石田波郷「雨覆」
菖蒲湯の踏みしだき入る菖蒲かな
長谷川櫂「新年」