苺(いちご) 初夏
【子季語】
覆盆子(いちご)、苺摘、苺畑
【関連季語】
苺の花
【解説】
赤く柔らかな苺は本来初夏のもの。今ではハウスで年中、栽培されるが、露地ものは五月から六月にかけて赤く熟す。円錐形の果実の表面には細かい種があって、それがぶつぶつした食感になる。
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【文学での言及】
【科学的見解】
苺は、バラ科オランダイチゴ属の多年草で、一般に食用となるのはオランダ苺である。日本には江戸時代の終わりころにオランダから輸入され、明治になって本格的に栽培される。花期は四月から五月。地を這うような葉の間から花茎を伸ばし、白色五弁の小さい花をつける。通常、果実として食べるのは、花托(花柄の先端部分)が肥大した部分である。日本には、在来のオランダイチゴ属の植物として、シロバナノヘビイチゴやエゾノクサイチゴ、ノウゴウイチゴなどが存在し、苺同様の果実を形成するが、オランダ苺と比べると小さい。(藤吉正明記)
【例句】
余所ゝの山は覆盆子の盛哉
支考「笈日記」
山ふみの錫にかけたり蔓いちご
暁台「暁台句集」
岩はなや旅人労(つか)れていちご食ふ
白雄「白雄句集」
山もとは日照雨ふるいちごかな
乙二「乙二発句集」
ほろほろと手をこぼれたるいちごかな
正岡子規「寒山落木」
苺ジャム男子はこれを食ふ可らず
竹下しづの女「はやて」
けさ摘みて草の匂ひの苺かな
長谷川櫂「蓬莱」