蚕豆(そらまめ) 初夏
【子季語】
空豆、はじき豆
【関連季語】
蚕豆の花
【解説】
お多福の形をした薄緑の大きな豆。「そら豆はまことに青き味したり」(細見綾子)の句のとおり、初夏の訪れを感じさせる食べ物の一つ。莢が空に向かってつくためこの名がある。また、莢の形が蚕に似ていることから蚕豆という字をあてることもある。茹でたり、莢ごと焼いたりして食べる。
【来歴】
『俳諧線車大成』(寛政11年、1799年)に所出。
【科学的見解】
蚕豆(ソラマメ)は、マメ科の越年草(冬型一年草)で野菜として栽培される。原産地は西南アジアから北アフリカで、八世紀ころ日本に渡ったとされる。秋に蒔くと翌年の春、白や淡紫色の花をひらき、初夏に莢をつける。緑色の莢の長さは十センチくらいで、莢の中には五、六粒の薄くて平らな豆が並ぶ。(藤吉正明記)
【例句】
そら豆やただ一色に麦のはら
白雄「題葉集」
そらまめの実のるにまけし旅やつれ
春紅「草庵集」
假名かきうみし子にそらまめをむかせけり
杉田久女「杉田久女句集」
蚕豆の花の吹き降り母来てをり
石田波郷「惜命」
そら豆のまだ眠さうな顔ばかり
長谷川櫂「新年」