夕顔(ゆうがお、ゆふがほ) 晩夏
【子季語】
夕顔の花、夕顔棚
【関連季語】
夕顔の実、朝顔、昼顔、夜顔
【解説】
夕顔は夕暮れにほの白い花を開く。その花は翌朝にはしぼむ。『源氏物語』夕顔の巻にあるとおり、貧しい家に咲く花として詩歌に詠まれてきた。花のあとには、丸い大きな薄緑色の実を結び、この実からは干瓢ができる。「夕顔」といえば、実ではなく花をさす。実は「夕顔の実」という。
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【文学での言及】
『源氏物語』夕顔巻
煙たつ賤がいほりのうすぎりの籬にさける夕がほの花 藤原家隆『夫木和歌集』
【科学的見解】
夕顔(ユウガオ)、はウリ科ヒョウタン属の蔓性一年草。瓢箪(ヒョウタン)の一変種である。北アフリカ原産で、日本には平安時代に中国から伝わったとされる。つる性の茎は五メートルから十メートルくらいのなり、巻きひげで他のものに絡みつく。葉はハート型で大きく、柔らかい毛で覆われる。夕方、葉腋に咲く白い花は五列し、花径五、六センチくらい。朝にしぼむ。果実は糸瓜のように細長く大きく、干瓢などに利用する。(藤吉正明記)
【例句】
夕顔に干瓢むいて遊びけり
芭蕉「有磯海」
夕顔に見とるゝや身もうかりひよん
芭蕉「続山の井」
夕顔に米つき休む哀かな
芭蕉「真蹟短冊」
夕顔の白ク夜ルの後架に紙燭とりて
芭蕉「武蔵曲」
夕がほや秋はいろいろの瓢かな
芭蕉「曠野」
夕顔や酔てかほ出す窓の穴
芭蕉「続猿蓑」
夕顔に雑炊あつき藁屋かな
越人「春の日」
夕顔やそこら暮るるに白き花
太祗「太祗句選」
ゆふがほや竹焼く寺の薄煙
蕪村「蕪村遺稿」
夕顔の中より出づる主かな
樗良「樗良発句集」
汁椀にぱっと夕貌明かりかな
一茶「七番日記」
夕顔を蛾の飛びめぐる薄暮かな
杉田久女「杉田久女句集」
ほのぼのと揺れて夕顔ひらきそむ
長谷川櫂「初雁」