新蕎麦(しんそば) 晩秋
【子季語】
走り蕎麦、秋蕎麦、初蕎麦
【関連季語】
蕎麦の花、蕎麦刈
【解説】
蕎麦の実が熟すより一か月ほど早く刈り取った蕎麦粉。熟す前の蕎麦ゆえに青みがありその風味を賞する。一日も早く初物を味わうことにこだわった江戸っ子に好まれた。最近では、今年取れた蕎麦という意味でも使われる。「蕎麦刈」は冬の季語。
【来歴】
『滑稽雑談』(正徳3年、1713年)に所出。
【実証的見解】
蕎麦には、秋蕎麦と夏蕎麦がある。秋蕎麦は夏にまいて十月ころに収穫し、夏蕎麦は春にまいて夏に収穫する。ともに生育期間が短く、痩せた土地にも強い作物なので、稲作に不向きな山間部や高原地帯などで栽培される。季語の新蕎麦は十月ころに収穫されるもののうち、まだ熟さない青みを帯びた実からできたものをいう。
【例句】
堂頭の新そばに出る麓かな
丈草「笈日記」
新蕎麦やむぐらの宿の根来椀
蕪村「夜半叟句集」
新そばを碓氷の雷に啜りけり
徂春「定本徂春句集」
江戸店や初そばがきに袴客
一茶「一茶句帖」