むささび 三冬
【子季語】
晩鳥、ももんが
【解説】
リス科の哺乳類。体長四十センチ。肢間に皮膜があり、木から木へ滑空する。昼は樹木の空洞内に潜み、夜間、木の芽、果実などを食べる。日本では、北海道を除く森林に分布。
【科学的見解】
ムササビは、ネズミ目(齧歯目)リス科の夜行性の哺乳類で、北海道と沖縄を除く東北から九州まで広く分布し、人里近くの低地から標高の高い亜高山帯までの森林に生息している。
本種は、樹上生活を主とし、昼間は大木などにできた樹洞で休息している。樹洞は、木の枝が折れることで木材腐朽菌が侵入し、樹木内部が分解されることで長い年月をかけて形成される。そのため、若い木々が生い茂る森林には樹洞は見られず、長期間維持された大木の存在する森林でしか樹洞は見られない。身近な環境では人間活動の影響により、大木が密生する自然林が少ないため、ムササビの生息に必要な樹洞も不足している。そのような状況の中で、神社には御神木などの大木が多く存在しているため、それらの木に形成された樹洞を利用して生活をしている個体も多い。樹洞の少ない森林では、人工的な巣箱を設置することで生息及び営巣環境を作り出すことが可能である。
本種は、完全な草食性であり、樹木の葉や木の芽、果実、花などを採食し、葉の場合は折り曲げて食べる性質があるため、食べ残された葉には丸い齧り後(食痕)が残る場合がある。本種の糞は、五ミリメートル程の球形をしており、棲み処である樹洞の周辺で見つけることができる。樹上での採食活動時には、広範囲に移動するため、足の間にある皮膜を広げて滑空する。天敵は、木登りが上手なテンと同じ夜行性のフクロウなどが存在する。
近縁種としては、同じ夜行性で皮膜を利用することで滑空して樹上生活をするニホンモモンガが存在するが、ニホンモモンガは山地から亜高山帯の標高の高い場所を生息環境にしているために、人里近くの低地などでは見ることができない。(藤吉正明記)