【子季語】
流星、夜這星、星流る、星飛ぶ
【解説】
宇宙の塵が大気中に入り込んで摩擦熱で発光するもの。人工の光のない高原などでは、降るように次々に星が流れる。
【例句】
飛び消ゆる菊の夜露やよばひ星
立圃「一宇幽蘭集」
星飛ぶや寝ねし我家へ帰りつく
篠原温亭「温亭句集」
【子季語】
寒風、冬風、風冴ゆ、凍て風
【解説】
冬に吹く風。北風、北西の風が多い。日本海側に雪、太平洋側に乾燥をもたらす風である。
寒風に吹きしぼらるる思ひかな
星野立子「笹目」
【子季語】
富正月
【解説】
元日から三日の間に降る雨のこと。正月というだけで、ただの雨でさえも、なにやら特別の恵みのように思える。
【例句】
御降にぬくもる土の煙りかな
野弓「親類題発句集」
おさがりやまづおもはるる秋の色
二柳「題葉集」
まんべんに御降受ける小家かな
一茶「八番日記」
御さがりやここぞと開く朱傘
梅室「梅室家集」
御降りの雪にならぬも面白き
正岡子規「子規句集」
お降や袴ぬぎたる静心
村上鬼城「定本鬼城句集」
隠れ住んで此御降や世に遠し
夏目漱石「新春夏秋冬」
お降りや竹深ぶかと町のそら
芥川龍之介「澄江堂句集」
お降りやほのぼの濃ゆき寝白粉
石橋秀野「桜濃く」
【子季語】
初茜空
【解説】
元日の朝の茜空。明けきらないのであたりはまだ薄暗い。
【子季語】
初夜明
【解説】
元日の明け方、山陰や森の陰などから差しそめる曙光を言う。
【例句】
一年を高でくくつて初夜明
曾良「乙酉歳旦帖」
淀川の水の碧に初明り
青木月斗「改造文学全集」
はつ明りさすやみかのべみかのはら
高田蝶衣「青垣山」
初明り火鉢の焔立ち来けり
臼田亜浪「定本亜浪句集」
【子季語】
春星、星朧
【解説】
春の宵に、潤むように見える星。夏星の熱っぽさとも冬星の鋭さとも異なり、暖かさを感じさせる。
【例句】
春星や女性浅間は夜も寝ねず
前田普羅「春寒浅間山」
乗鞍のかなた春星かぎりなし
前田普羅「飛騨紬」
鵯去つて枝にほのめく春の星
原石鼎「原石鼎全集」
牧の牛濡れて春星満つるかな
加藤楸邨「雪後の天」
【子季語】
鎌風
【解説】
外気で皮膚が鋭い刃物で切ったように傷つく現象。昔は鼬や風神の仕業とされた。原因は、気象条件で空気中に真空に近い状態ができ、体内外の気圧差で傷つくというが、はっきりしない。東北や信越など北国に多く見られ、地域によっては七不思議の一つにも数えられる。